理解が追いつかない「発達障害」と生きる

医師も親も迷っている

都内在住の母親は、話しかけても、何を働きかけても一切無視する長男にどう接していいのか、悶々と悩む日々が続いていた。心配して長男が3歳の頃に受診した最初の病院では、診断がつかず様子見となった。

「お母さん、子どもにちゃんと関わってあげている?」

という医師の言葉に、「私のせい?」と自分を責めた。

次に訪れた総合病院では、児童精神科医から前置きもなく「自閉症」と診断名だけ告げられた。先の見通しを聞いても、

「ここでお話しできることは何もありません。あとはソーシャルワーカーのところで」

と突き放されるだけだった。

視線で自閉症見分ける

先端の研究では、科学的に9割程度の精度で見分けられる健診法も開発されている。浜松医科大学子どものこころの発達研究センターなどを中心とする研究チームが赤ちゃんの「視線」探索で自閉症児を見分ける装置を開発。自閉症児に見られる視線を合わせない症状や社会性の障害に着目した。乳幼児健診などでの活用を目指している。

早期発見・早期診断は、世界の潮流になりつつある。根本的な治療はないものの、「適切な対応」で、社会生活上の困難は軽減できると考えられている。

埼玉県戸田市にあるなかじまクリニックを訪ねると、5歳10カ月のケンタくん(仮名)は、会話のトレーニングを受けていた。母親と月に1度通う。発達障害の療育経験が豊富な小児科医の平岩幹男さん(65)が新幹線のおもちゃを差し出すと、ケンタくんは、「ありがと」と受け取った。平岩さんの「できたね! タッチ!」の掛け声で、ケンタくんはすかさずパチンッとハイタッチをかわした。

「じゃあ、こんどは新幹線を2つください」

「どうじょ」

「やった! できたね!」

ここで再びハイタッチ。

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