それに加え、夜中に気持ちが不安定になってしまう母親に付き合って、夜中まで一緒に起きていることが増えました。家庭で心身の負担が増える一方で、職場ではプロジェクトマネージャーになったばかりで簡単には休めず、気力で乗り切るしかありませんでした。
それでも何とかなると思って奮闘し続けた彼女は、ある日突然、朝布団から起き上がれなくなったと言います。その後、どうにも身体が思うように動かなくなり、職場での責務が果たせないことに無力感を感じ、最終的には、仕事を辞めてしまったのです。
その後、身体症状は改善されたものの、職を失い、再就職もままならず、将来に大きな不安を抱きながら暮らすことになってしまいました。
介護中であることを会社に隠したまま働いた結果…
このような介護離職を防ぐために、厚労省は制度を設けています。「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」という政策紹介ページでは、介護休業、介護休暇、時短など具体的な話が並んでいます。
しかし、問題の本質は「制度があっても取得できない」という現状です。仕事を休むことのハードルは、想像以上に高いもの。しかも、そのハードルを上げてしまっているのは、「周りからの圧力」よりも「本人の意思」である場合が、かなり多く見受けられます。
現実的に考えれば、当然のことです。働き盛りで、重要なポストに抜擢されれば、誰だって闘志を燃やすでしょう。加えて、ここで休めばほかの人が代わりに入ってしまう、自分の立場が保証されなくなる、という思いも湧きます。人材不足の職場なら、多く休まなければならないことに後ろめたさを感じ、こんな思いをするくらいなら辞めてしまったほうが楽……という思いを持ってしまうのも、不自然ではありません。
以下は、実際にあった40代独身男性の例です。独り暮らしをしていた父親が病気で通院を要する体になり、日常生活も不自由するようになってしまいました。会社に要介護の家族がいることが知れたら重要な仕事からは外されるのではないか、との懸念から、父の状態を隠したまま、なんとか有給を取って介護にあてる日々に突入しました。
しかし有休を取っている自分を、周囲は「やる気がない」「サボっている」と思うのではないかと不安が湧き起こり、残業をしたり、必要以上に業務に取り組んだりした結果、心身ともに疲弊し自分自身が鬱状態に。このケースも、最終的には仕事を離れ、経済的な先行きの不安を抱え込むことになってしまいました。
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