なぜ日本は「電子書籍の墓場」なのか(上) キンドルもまた墓場へ直行

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出版デジタル機構が、まず行ったのは、経済産業省の補助事業「コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)」からの10億円の補助金を基にした書籍デジタル化事業だった。この事業は、2013年3月までに「6万点電子化」を目指していた。補助金があれば、これまでデジタル化に消極的だった中小出版社も乗り気になるだろう、コンテンツも自然に集まってくる、と機構は考えたようだ。

しかし、ふたを開けてみると、応募出版社は予想外に少なく、いつまでたってもタイトルは増えなかった。

塀の上で様子見がお利口

それでも出版デジタル機構は、11月16日から、ようやく電子書籍の配信を開始した。10月までになんとか集まった数千冊から、第一弾として講談社のブルーバックスなどの既刊本が選ばれた。しかし、業界関係者なら知っているように、この計画は、もう失敗したも同然である。「この先、どうやって6万点を集めるのか?」と問われれば、答えようがないからだ。

出版デジタル機構の「100万点電子化」計画は、現時点では「絵に描いた餅」である。結局、出資金の150億円(ほとんどが税金)を食いつぶして終わる可能性が高い。

実は私は、知り合いの出版人から「既刊本をデジタル機構に持ち込むべきかどうか」と相談を受けたことがある。「持ち込めば電子化してくれたうえに配信してくれるのだから手間もお金もかからない」と、言うのだ。

しかし、補助金はあっても電子化費用は売り上げと相殺ということになっている。つまり、売れなければ持ち出しなのだ。だから、「売れる見込みがないならやめておいたほうがいい。私ならそうする」と答えた。

この出版デジタル機構の「失敗」からわかるように、(3)から(7)の条件が整わなければ、(1)電子化を進めたり、(2)電子書籍専用端末を販売したりしても、時期尚早ということだ。現時点では、将来の電子出版市場を見据えて先行投資できる余力がある会社以外は、フェンスシッティング(塀の上で様子見)する。それが、いちばんお利口だ。

山田 順 ジャーナリスト

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やまだ じゅん / Jun Yamada

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年『光文社ペーパーブックス』を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』『出版・新聞 絶望未来』『2015年 磯野家の崩壊』などがある。

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