「あの淫乱女!」伊藤野枝の破天荒すぎる28年

不倫上等、貧乏上等、迷惑上等

飲み込まれたらひとたまりもない、嵐のような女のひとである(Anna Omelchenko / PIXTA)

『村に火をつけ、白痴になれ――伊藤野枝伝』はアナキスト大杉栄のパートナーで、関東大震災後に大杉とともに虐殺された伊藤野枝の評伝だ。

淫乱、逆賊にくくられた彼女の生涯

上の画像をクリックするとHONZのサイトへジャンプします

過激なタイトルだが、ページをめくって腰を抜かす。いきなり「あの淫乱女!淫乱女!」と太字で書いてある。岩波書店が心配になるほど、冒頭から衝撃的だ。

野枝は福岡県の地元ではいまだに逆賊扱いで、十数年前にテレビ局の取材を案内した人によると、同年代の存命のおばあさんが「地元の恥をさらすのくわあああ(大意)」と大声でいきりたって殴り込みをかけてきて、淫乱、淫乱と叫んでいたというのだから穏やかでない。

とはいえ、おばあさんの気持ちもわかる。大文字の歴史では、伊藤野枝は淫乱、逆賊にくくられても否定できない。

勝手に決められた縁組みによる結婚を破棄しようと逃亡して、女学校の恩師の家に転がり込むし、恩師を捨て自ら大杉栄との四角関係に身を投じるし、平塚らいてうに「あんた仕事しないなら、私に雑誌ちょうだい」と迫るし。大杉が拘束されると内務大臣の後藤新平にチョー面倒な手紙を送りつけるし。わずか28年の生涯とは思えないほど、波乱に満ちている。

略歴のどこを輪切りにしても、ぶっ飛んでいるのだが、生きざまはシンプルだ。「やりたくないことはやりたくない。欲しいものは欲しい」。

他人のものでも関係ない。お金がなければ、頼んでもらえばいい。お金があるときは、与えればいい。おまえのものはわたしのものの、でも私のものもみんなのもの。不倫上等、貧乏上等、迷惑上等。合言葉は相互扶助。因習なんてぶっ壊せ。貞操なんてたたき売れ。頑張れ、ベッキー。そんな感じだ。

次ページ良妻賢母なら発狂間違いない言葉のオンパレード
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • 岐路に立つ日本の財政
  • 日本人が知らない古典の読み方
  • 賃金・生涯給料ランキング
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
菅新政権が誕生しても<br>「安倍時代」は終わらない

牧原出氏執筆の連載「フォーカス政治」。9月16日に菅新首相が誕生しましたが、施策の基本線は「安倍政権の継承」。惜しまれるように退任し、党内無比の外交経験を持つ安倍前首相は、なお政界に隠然たる影響力を保持しうるとみます。その条件とは。

東洋経済education×ICT