アンダーアーマーのデジタル戦略にひそむ野心 「ナイキは手強いが我々の方にかなり分がある」

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統合というアイデアは、目新しいものではない。来る6月に登場する予定のNike+アプリは、同じようなモデルを採用している。Nike+は、3つの既存Nike+アプリ、すなわちナイキランニングクラブ、ナイキトレーニングクラブ、ナイキSNKRSを統合したものだ。

アンダーアーマーはナイキの新製品に脅威を感じてはいない。サーストン氏によると、アンダーアーマーのフィットネス製品は、ショッピング体験ではなく、フィットネスそのものに重きを置いているからだ。ジム内外での運動、アクティビティトラッキング、食生活などに関する情報とツールを提供している。

もっとも重要なのは、アンダーアーマーでは、ユーザーのデータを使用して「パーソナルコーチ」体験ができる点だ。たとえば、ユーザーのアクティビティがストレスを示し、通常のレベルよりも心拍数が20%上昇していて危険の可能性がある場合、アンダーアーマーのヘルスボックスはユーザーに対して運動量を減らす、あるいは中止を促すという。

「これはナイキの戦略とはまったく違うものだ。我々の戦略は、マーケティング中心ではなく、製品中心の取り組みだ」と、サーストン氏。「ナイキは手強い競合ではあるが、現在、コネクテッドフィットネスに関しては我々の方に、かなり分があると思う」。

アップル、フィットビットも「競合」

ヘルスボックスのようなデジタルフィットネス製品は、成長を続けるウエアラブル市場において、ナイキのほかにも、フィットビットやAppleも直接的な競合となる。リサーチ会社のパークアソシエイツによると、デジタルフィットネス市場は、2014年の20億ドル(約2150億円)から、2019年には54億ドル(約5840億円)へと成長する見込みだという。

「米国でフィットビットが大成功を収めたので、2015年度末の数字には急激な成長が見られると予想している。この先2年くらいは、フィットネストラッカーを中心にモバイルヘルスの成長傾向が続くと思われる」と、パークスアソシエイツのヘルス&モバイル製品ディレクターであるハリー・ワン氏は述べている。

2015年の時点で、フィットビットのアクティブユーザーはおよそ950万人。アンダーアーマーのアクティブユーザーは7700万(登録ユーザーはおよそ1億6000万)人だ。「フィットビットのユーザー規模は、まだ我々の足元にも及ばない」と、サーストン氏。「フィットビットやアップルが直接的な競合だとは考えていない。彼らとはパートナー関係を結んでいる」。

フィットネスセンサー技術をメインの製品に統合するスポーツアパレルメーカーは増えてきている。2018年初頭までには、現在のスマートシューズやスマートシャツよりも進化し、手頃な価格の製品が登場するだろうと、ワン氏は述べている。

デジタル広告、デジタルフィットネスプラットフォームのライセンスとサブスクリプションで構成されるアンダーアーマーのコネクテッドフィットネス事業は、まだ大きな収益をもたらすには至っていない。2015年のアンダーアーマー年次報告によると、デジタルフィットネス事業は、アンダーアーマーの合計収益およそ39億ドル(約4220億円)の1.3%となっている。

Yuyu Chen(原文 / 訳 片岡直子)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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