胡錦濤、完全引退へ。”院政”の夢破れる 【スクープ】中国、政治闘争のゆくえ

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北京発の情報によれば、10月下旬に開かれた会議で決定した常務委員会のメンバー7人は以下のとおりだ。

習氏のほか、首相になる李克強・第一副首相、王岐山・副首相、張高麗・天津市党書記、張徳江・副首相、兪正声・上海市党書記、劉雲山・党中央宣伝部長。

李氏のほかは、胡氏より江氏と近いとされる面々ばかりだ。総書記に次ぐ党内序列2位の全国人民代表大会委員長には、王氏が就任するとみられている。

胡氏側近で現職の常務委員である李克強氏はかろうじて残り、序列3位の首相になる見通しだ。だが、同じ共青団出身者として注目されていた李源潮・党中央組織部長、汪洋・広東省党書記は選に漏れた。次期指導部に胡氏の影響力を残すのは、難しい情勢だ。

次期政権は、政治的に保守化する

胡氏が党内抗争で押されていることは、07年から政権中枢の党中央弁公庁主任を務めてきた腹心の令計画氏が9月に交代したことからもうかがえる。子息の不祥事を理由にしたものと伝えられるが、その地位を引き継いだのは習氏に近い栗戦書氏だった。

最近、党機関紙の人民日報の報道では、党内でのキャンペーンについて「胡氏と習氏が指示を下した」と2人の名前が併記される例も出ていた。

いかに次期トップに事実上内定しているとはいえ、現職の最高指導者と同列に扱われるのは異例だ。そのため、すでに主導権が胡氏から習氏に移った可能性が指摘されていた。党大会の直前にも温家宝首相ファミリーの蓄財ぶりが米紙で蒸し返されるなど、引退を控えた現指導部へのダメ押しとも見える動きがあった。

胡政権の下でイデオロギーに関する締め付けやメディア統制は江時代より厳しくなったが、党宣伝部長として旗振り役を担ってきたのは常務委員入りが決まった劉雲山氏だ。

劉氏は党内の規律保持に当たる党中央紀律委員会を担当するとの情報があり、実現すれば今後は一段と統制色が強くなることが予想される。汪洋氏や李源潮氏など、比較的リベラルとされている候補が入らなかったことと合わせ、次期政権の性格は政治的には保守的なものになりそうだ。

胡政権の10年間、中国は平均で2ケタの経済成長を享受してきた。その条件が内外の情勢の変化で失われた現在、経済改革のビジョンをどう打ち出すか。それが習政権の最初の課題となる。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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