「保育士の給料」はいったいどれだけ安いのか 月給6000円増だけでは働く魅力を増さない
私立保育所の求人をいくつか眺めてみると、正社員の初任給は20万円前後で募集している保育所が多いことがわかる。初任給20万円というと、多くの業種における大卒新入社員の初任給とそんなに大差はない。
問題はそこからの昇給幅の少なさである。保育士全体の平均年齢35.0歳に対し、平均月給は21.9万円。35歳の保育士なら少なくとも10年以上の経験があるはずなのに、初任給からほぼ昇給していない計算となる。
これは私立保育所の収益構造によるところが大きい。私立保育所は、認可保育所と認可外保育所に分かれている(公立保育所も「認可」「認可外」の区分においては、認可保育所の一種であるが、人件費の考え方が違うので、ここでは除外する)。
経営努力をしても収入を増やしにくい
私立の認可保育所は、施設や職員数などにおいて国の設置基準を満たし、公費により運営される保育所である。市区町村が一括して集めた保育料に税金を足して認可保育所運営のための原資とし、各認可保育所に運営費として分配する。認可保育所へ分配される運営費の額は、原則として当該保育所に在籍する年齢階層ごとの園児数によって計算される。
園児1人を受け入れるのにかかる1カ月あたりの費用を「保育単価」とし、年齢階層ごとの「保育単価」×「園児数」の積み上げが、保育所の収入となる。在籍する保育士の平均勤続年によって最大12%の加算があるが、基本的には在籍する園児数によって予算額が決まってしまい、経営努力をしても保育所に入ってくる収益を増やせない。これが私立の認可保育所で職員を昇給させることが難しい根本的な理由だ。
私立の認可外保育所はどうか。認可外保育所とは、施設の広さや職員数などで国の設置基準を満たすことができず、公費の支給を受けることができないので、原則として保育料収入だけで運営される保育所のことを指す。東京都の「認証保育所」制度のように、認可外保育所に対し独自の補助を与えている地方自治体もあるが、やはり、保育士の待遇は認可保育所と同等か、それに満たない場合も少なくないようだ。
政府が打ち出した保育士の昇給のための補助金の対象範囲はまだ不明確であるが、認可外保育所で働く保育士も、認可保育所で働く保育士と職務内容に何ら変わりはないので、認可外保育所の保育士が補助金の対象から外れるということは望ましくないだろう。
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