「変な名前」でヒットを連発するネーミング術 「インドの青鬼」「水曜日のネコ」が、ビール?

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井手氏は、この成功例を社のみんなに話しまくった。すると面白いほど、仲間たちの、ネーミングに対する感覚――社の思考回路が変わっていった。

「前略、ビール屋の呪い」

ヤッホーブルーイングの社員がネーミングに関し持っている共通認識は、筆者が見る限り、下記の4点だ。

・他社がつけそうな名前は絶対につけない
・言葉を“ありえない組み合わせ”にする
・言いたいことはそのまま言わず、別の言葉に託す
・売れている商品のネーミングをベンチマークし、なぜ目立ったかを深耕して学ぶ

 

なんとも人を食ったネーミングの「前略 好みなんて聞いてないぜSORRY」

その後、井手氏らは“当たるネーミング”を連発していく。まず、「前略 好みなんて聞いてないぜSORRY」。このシリーズ、醸造家目線で自分たちが飲みたい和のビールを造ろう、というコンセプトだった。この時、井手氏らがベンチマークしたのは、桃屋の「食べるラー油」だったという。

「『食べるラー油』って、正式名称は『辛そうで辛くない少し辛いラー油』なんです。僕はこの製品名を見て“お客様が直感的に理解しにくく、でもコンセプトをそのまま伝える製品を出す時に使いたいな”と思っていました」

「食べるラー油」は、商品名が長くなってしまったのではなかった。井手氏は“あえて長くした”という明確な意思を見た。これを周囲に話すと、チームの仲間たちが様々な案を出してくる。

「男もビール、女もビール、でもやっぱりみんなビールじゃん」

「好みなんて聞いてないぜ」

とくに後者は、井手氏いわく「ストレートにスカッとボクらの気持ちを表していた」。この時、井手氏は「でも上から目線でボクららしくないから、SORRYと謝っておこう」といったアイデアも考えていた。

それとは別に、会議前に誰かが何かの雑談で「このビール呪われているね~! 面白いや~。あははは!」という話をしていた。呪いの話をしているのに笑いが起きているとは面白い。これはいい!

そこでパッと頭に浮かんだのが「ビール屋の呪い」である。しかし、体に入れるものに「呪い」はさすがに恐ろしい。そこで何か恐ろしさを和らげる表現はないか考えていたところ「手紙の『前略』という、全く関連のない言葉を入れたら恐くないんじゃないか」と思い至った。「前略 ビール屋の呪い」。これはいい! おもしろい! そしてこの案を会議で発表したら予想以上にみんなが爆笑した。

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