セブン「井阪新体制」が船出から直面する試練 鈴木会長が新経営陣に残した言葉とは?
今回の人事で焦点となったのは、鈴木会長の処遇だ。
15日の指名・報酬委員会では、鈴木会長を「名誉顧問」とする処遇について、話し合われた。だが、それでは鈴木会長の影響力が残ると懸念した社外取締役が難色を示したようで、決着がつかなかった。
19日の取締役会であらためて議論すると、再び見解が割れる事態も想定された。そのため今回の取締役会の議題は役員人事のみとし、鈴木会長の処遇に関する議論自体が見送られたと考えられる。
鈴木会長の処遇は「時間をかけて議論」
その結果、19日には鈴木会長がセブン&アイのほかイトーヨーカ堂などグループ各社の会長を退任することだけが発表されて、その後の処遇は明かされなかった。
鈴木会長は自身の処遇について、「(5月26日の株主総会までは)現役なので、そういうことは(私自身が)考えるものではない」と言及。一方、セブン&アイのある役員は、「この件はもう少し時間をかけて、議論することになるだろう」と見通す。
振り返ると、7日の取締役会は、井阪氏のセブン-イレブン社長交代案をめぐって、取締役の意見が割れた。その当事者である井阪氏自身が、今度はグループ全体の舵取りを担うポジションに立つ。今後の井阪氏の経営方針に、すべての取締役が同調するのか、不透明感も漂う。
井阪氏自身がグループのトップとして力を発揮できるかも未知数だ。井阪氏は1980年にセブン-イレブンに入社。商品本部長を経て2009年に同社社長に就任するなどコンビニ一筋でやってきた人物。2016年2月期まで5期連続で最高益を達成した。
一方でグループ全体を見渡せば、コンビニや金融関連が好調な反面、総合スーパーや百貨店、通信販売は苦境にあえいでいる。コンビニ以外の業態経験が乏しい井阪氏は、こうした不振事業の再建や整理を進められるのか。
グループ横断の通販サイト「オムニ7」も2015年11月に稼働したばかり。2018年度に売上高1兆円を目指しているが、現状では販売する商品数が手薄な状況だ。リアル店舗の強みを生かして、ネット専業の企業とは異なる価値を提供できるかも、井阪氏に課された重要な使命の一つである。
退任する鈴木会長は新経営陣に助言する可能性について「今後どうするかはまったくの白紙。それは5月26日以降のこと」と語る。カリスマ・鈴木会長が完全に退いたとき、セブン王国は強さを維持できるのか。井阪新体制は船出から試練を迎える。
(「週刊東洋経済」4月30日-5月7日号<4月25日発売>「核心リポート01」を転載)
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