糖尿病の足切断防ぐ新ステントを国内初投入--米医療機器大手副社長に聞く
--日本では治験期間が長く、研究開発費が高くついてしまうとの声も聞く。小さい病院が多数存在するため、営業費用も膨らみがちなどといわれる。一方で、国の医療費抑制の流れを受けて保険償還価格は右肩下がりで推移。参入している外資系医療機器メーカーにとっては今後、ビジネスが一段と難しくなるのではないか。
どんなビジネスであれ、あるいはどこの国にせよ物事は変化していく。開発コストが安く済む時代は終わった。当社としては企業努力をするしかない。たとえば、臨床試験に際して日本では厚労省やPMDAに対して、海外在住の日本人の被験者を症例として認めてもらえないかといったことをお願いするケースもある。今回のステントの治験ではそれを許可してもらった結果、グローバルな形でデータを取ることができた。
今は医療機器でも承認や発売の前にすべてのデータを取るのではなく、市販後調査でデータを収集するということができないかという動きが出てきている。市販後であれば、被験者には当該製品を使った治療を受けたいという患者が多く含まれている。真の意味でのパフォーマンスがデータに反映されるわけで、患者には有益だ。メーカー側も、市販されていればすでに売り上げが計上されているはず。その収入を市販後調査に充てることも可能になる。
医療費高騰は世界各国共通の課題だ。「コスト・トゥー・マーケット」が高すぎることで、市場に出せないまま終わってしまう製品があるという状況は、メーカーにとっても残念なこと。患者もいい製品にめぐり会う機会を逸することにもなってしまう。
■中国の医療機器市場は2億5000万人規模
--中国での販売について聞きたい。景気減速観測が台頭しているが、医療機器市場への影響はないのか。
中国の5カ年計画では、政府がヘルスケア振興を標榜しており、他の産業に比べると、医療産業は有利な立場だ。確かに、経済成長のピッチは鈍っているが、中間層が厚みを増しており、医療へのアクセスのニーズも高まってきた。当社の中国事業は24~25%の伸びを示している。
中国の医療機器市場は2億5000万人程度を対象にしたマーケット。米国のウォールストリート流の見方では開拓がままならない。欧州での販売の落ち込みを中国での拡大で相殺しようといった視点は誤りだ。特別な存在と位置づけるべき。5年から10年、あるいは20年というタイムスパンで見れば、とても大きな市場に飛躍するのは間違いないだろう。