震災で職を失いAV女優になった66歳の現実

日本の底辺でいま何が起きているのか

借金を背負わされた夕湖さんは、昼は飲食店でパート。夜はホステスを辞めて、時給のいいピンサロで働いた。

「借金抱えたのは長女が小学生のときだから、30代。その頃はけっこうお客を呼んで、月50万円か60万円はもらっていた。旦那は倒産した後、タクシーに乗った。タクシーで勤務しても、車をどこかに隠してパチンコに行く。だから給料はほとんど入れてもらえなかった。人間の屑ですよ。飲食店と風俗しながら、子育てはなんとかやりましたよ」

働き詰めの生活が祟って45歳でカラダを壊し、風俗嬢を引退している。それから仕事は、ずっとホテルのベッドメイキングである。

「元旦那は去年死んだ。汚い生き方をしてきた人だから、死んだときに兄弟、親戚、友達、誰一人も葬式に来なかったって。子供3人だけで通夜と葬式をしたって。最低。旦那のお姉さんは生きているけど、『死んで清々した』って。それくらい酷い男。息子には言いましたよ。『あんた、この惨めな葬式を覚えておけ』って。『あんたは間違っても、そういう生き方はしないでね』って」

そして50歳。下の息子が20歳の誕生日の翌日、夕湖さんは単身で東京に逃げた。3人の子供は仙台で独立し、現在はそれぞれの生活を送っている。

空腹で死のうと思って手首を切った

話を戻そう。夕湖さんは「70歳まで可」というAVプロダクションの求人に飛びつき、超熟AV女優になった。AV女優として細々と活動できたのは半年程度。使い捨てられた。そして再び貧窮状態に陥る。

「あれは2年半くらい前かな。100円もなくなっちゃって、何日間かは飲まず食わず、お米もなくなって、この部屋に閉じ籠って動かないで我慢した。動かなくてもお腹が空くわけで、1週間くらいでどうにもならなくなって、死のうかなって頭に浮かんだ。本当に死のうと思って、包丁で手首を切ったんですよ。切ったのは、あそこの玄関のあたりですね。けど、血がだらだらでるだけで、全然死ななくて。紐でくくって部屋で首を吊ろうと思った。紐みたいなのを見つけて首輪を作ったけど、ここで自殺しちゃうと大家さんとかに迷惑かかるなって。それで首つりは諦めて、包丁を持ってそこの公園に行ったんです。誰もいなかったし、大丈夫かなって、カラダを刺して死のうとしたけど、どうしても包丁を自分のカラダに刺す勇気がなかった」

部屋は天井が高く、ロフトがある。部屋の灯りは電球が一個で薄暗い。夕湖さんがこの部屋で首を吊り、ロフトからぶら下がる姿は容易に想像ができた。寒気がした。

時計を眺めると20時、外は暗かった。自殺の話をする夕湖さんがタングステンの灯に浮かびあがり、気持ち悪さを超えて怖くなった。私は話を遮って外に出ようとしたが、夕湖さんは無表情で語りながら近づいてくる。

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