英国はEU離脱すると国際影響力を損なう この不穏なご時世、残留の方がお得だ

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今や世界人口の約9割は発展途上国に暮らす。その約3分の2は25歳未満の若年層だ。そのため途上国で経済成長が停滞し、生産量が減少すれば深刻な事態を招きかねない。英国の海外開発研究所の予測では、25年になっても世界人口の約8割がまだ経済基盤が脆弱な国家での暮らしを余儀なくされるという。

技術革新による雇用減、所得格差の拡大、人口動態の変動、天然資源の減少、環境問題……。世界では深刻な課題が次々と浮上している。今や第2次世界大戦以来、最悪となる難民危機にも直面しており、シリアをはじめ計6000万人もの人々が住まいを失っている。

国民は冷静な判断を

英国がEUを離脱したところで、こうした不穏な環境と無縁でいられるわけではない。むしろ新たな課題への対応の指針を、英国から奪ってしまうだけだ。国際社会への影響力を維持したいのであれば、EUの外側にいるより、内側にいたほうがよほど有利となるはずだ。

確かにEUを離脱しても、英国の国際社会における歴史的な重要性、国際連合の安全保障理事会の常任理事国としての立場が失われるわけではない。しかし今後新たな国際機関が創設されれば、従前と同様の地位や影響力は保障されない。

すでにEU諸国は、英国が経済、政治分野で欧州の重要な一国であるとの認識を抱いている。その見方が維持されるかぎり、英国人が好む表現を借りるなら、「自分より大きな相手に対するパンチを繰り出せる」状況は変わらないはずだ。

英国の有権者は国民投票に向け、国際社会での自国の立ち位置について、冷静に認識すべきである。

週刊東洋経済4月23日号
 

ダンビサ・モヨ 国際経済学者

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ダンビサ・モヨ / Dambisa Moyo

ザンビア出身の経済学者。米ハーバード大学修士、英オックスフォード大学博士。世界銀行、米ゴールドマン・サックスでの勤務経験あり

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