領土紛争に油を注ぐ日中韓の国家主義者

尖閣諸島をめぐる争いの背景にあるもの

 韓国と中国に対する日本の侵略の野蛮さを考えると、日本のかつての犠牲者に自然と同情したくなる。この領有権争いが引き起こす激しい感情は、アジアで日本が起こした戦争の傷が生々しいことを示唆している。韓国の李明博大統領はこうした状況をとらえて、天皇が戦争に対して正式に謝罪することと、慰安婦に対する金銭的な補償を要求した。

不幸なことに日本政府は、日本の歴史家がもたらした多くの状況証拠や、証拠文書があるにもかかわらず、このおぞましい仕組みに対する戦時政府の責任を否定することを選択した。当然ながらこうした姿勢は韓国人をさらに怒らせている。

李大統領の本当の敵

ただ現在の紛争をすべて癒えない戦争の傷のせいにするのは単純すぎる。日中韓で意図的にかき立てられる国家主義の感情は最近の歴史とリンクしてはいるが、その背後にある政治状況は国ごとに異なっている。これら3国のメディアは「国家的な」見地以外のことを反映しないことにかけて、ほとんど自閉的なので、3国の政治状況が適切に説明されることは決してない。

中国の共産党政府はもはやマルクス主義、いわんや毛沢東主義から正当性を引き出すことはできない。中国は権威主義的な資本主義国家であり、(日本との深い経済関係を含めて)他の資本主義国家とビジネスをすることができる。

したがって、90年代以来、一党独裁国家を正当化するものとして、国家主義が共産主義に取って代わった。反西側、特に反日感情をかき立てれば、独裁国家における数々の失敗や生活の不満から国民の注意をそらすことができるのだ。

韓国において、日本の植民地時代の最も苦痛に満ちた遺物の一つは、韓国のエリート層が当時日本に広範な協力をしていたことに由来している。こうしたエリートの子孫が韓国の保守政治で重要な役割をなお果たしており、同国の左派が時に応じて粛清と報復を求めることにつながっている。

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