トランプの「共和党批判」は実に的外れである ルール変更のチェックを怠ったのは自業自得

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たとえば、ある州では、代議員選出に3つの段階を踏んでいた。まずは、地区党員集会で拘束力のない模擬投票を行う。これは、人気予備投票に過ぎない。次に、党員集会が州大会の代議員を選出する実際の選挙を行う。最後に、選出された州大会代議員が全国大会の代議員を選出するのだ。

1つめと2つめの選挙は同じ日に行われたが、結果が全く異なることも珍しくはなかった。しかし、結果として認められるのは片方だけなのだ。このためRNCは各州の組織に、1つめの予備投票廃止による一本化を求めた。

ちゃんとルールを見ていないだけ

トランプ氏はコロラドなどの州で代議員を獲得できなかったのは党の選出法のせいだと批判している。だが、RNCによると、選出法は昨年10月1日までに現方式に変更されており、大統領選を目指す候補者が州別のルールを把握する期間は数カ月あった。代議員を「盗まれた」とするトランプ氏の主張は、的外れだと言えよう。州ごとに選出法が異なる点を考慮しなかったとみられる、同氏のような候補者にとっては、嬉しくないサプライズだったのかもしれないが。

コロラド州で9日までに行われた代議員選出では、テッド・クルーズ候補が大勝した。昨年8月に同州では人気投票廃止により手続きが簡素化された。そして3月1日以降は、共和党員なら誰でも、州大会に出る代議員を選ぶ党員集会に参加可能だった。クルーズ陣営がこの党員集会に支持者を多数潜り込ませた一方、他の陣営はそうした手を打たなかった。

専門家予想では、コロラド州に割り当てられた代議員34人のうち、トランプ氏は最低でも7人を獲得するとみられていた。でも、結果はゼロとなり、同氏は衝撃を受けた。だが、驚くべきではなかったのだ。ルールは数カ月前に変わり、これまでで最もシンプルなものになっていたのだから。

トランプ氏はこうしたルールを「民主的ではない」と批判している。確かに、直接投票の方が、(間接的な)党員集会よりもシンプルな手法ではある。だが、コロラドも含めたすべての州が、RNCに出席する代議員の選出に携わる機会を有権者に与えているのも事実だ。

米国の連邦制度を理解するのは実に努力を要する。選挙の時期や手法、そして行われる州が一つではないからだ。しかし、トランプ氏は不満のようだが、RNCは2016年の大統領候補の指名手続きを簡素化するために、ある程度の手を打ってきたのだ。

著者のデレク・ミュラー氏は米ペパーダイン大学法学部の準教授(選挙法)。この記事は同氏個人の見解に基づいている。

 

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