JR西日本が観光列車を2本同時投入する狙い アートな島旅を後押し、旧国鉄列車の再現も

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8台の自転車を設置できるサイクルラック

自転車を解体せずそのまま持ち込み可能としている鉄道路線はローカル線を中心にいくつかあるが、新たに登場した観光列車がサイクルラックを設置しているのは珍しい。

「自転車愛好家は自分の自転車を大切に扱っており、みんなに見てもらいたいと思っている人も多い」と、JR西日本の中村圭二郎・岡山支社長は、サイクルラックを設置した理由を語る。車内に置かれたきれいな自転車を見たら、自分も自転車で旅をしたくなるという人も出てくるかもしれない。

ラ・マル・ド・ボァは岡山―宇野間を運行するが、将来は別ルートでの運行も検討中。「山陽本線を西へ、尾道なんかいいですね。あるいは山陰方面も」と、中村支社長は構想を練る。さらに、岡山は瀬戸大橋を通じて四国と鉄道で結ばれている。“マイ自転車”で四国一周にチャレンジするサイクリストは多い。JR四国の高松駅や琴平駅に乗り入れられたらきっと面白いに違いない。

「この自転車の持ち主は駅に着いた後、どこに向かうのだろう」。そんなことを考えさせるラ・マル・ド・ボァは、観光列車に新たな魅力を付け加えたといえそうだ。

4月2日から運行を開始した「ノスタルジー」

一方、ラ・マル・ド・ボァが走り始めた5日前の4月2日に、実は岡山―津山間でもなんとも懐かしい列車が運行を開始していた。その名も「ノスタルジー」。

朱色とクリーム色のツートンカラーはかつての国鉄カラーの再現。内装も青色のモケット(シート生地)やボックス席窓下の瓶ジュースの栓抜きなど懐かしいインテリアを再現した。単なる古い列車ではない。改造によって生まれ変わった、れっきとした観光列車である。

扇風機には国鉄時代のロゴ「JNR」

車内はレトロ感が満載

青いシート生地は特注品。一方で、栓抜きは廃棄車両の部品を米子市内にあるJR西日本の工場がたまたま保管しており、そこから調達することができた。どうせ栓抜きを設置するなら瓶ジュースも販売しようということで、コカ・コーラウエストが保有する瓶ジュースの自動販売機を岡山駅と津山駅に設置した。

さらに、天井の扇風機には国鉄時代のロゴ「JNR」を付けるという念の入りよう。中吊り広告も昭和30~40年代のポスターを復刻させる計画だ。

ノスタルジーは国鉄時代の列車を忠実に再現することを目指したものであり、当然のことながら外部デザイナーに頼る必要はない。すべてを社内で企画・デザインした。

次ページなぜ「ノスタルジー」なのか?
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