(中国編・第六話)本当の困難


 困ったのは、北京に向かう日本側からの出席者がなかなか決まらないことだ。
日中間は緊張した関係をさらに強め、多くの交流事業は延期などに追い込まれている。反日デモを契機に日本のメディアも中国への批判を強め、中国との関係を重視する経済人の自宅に嫌がらせが始まるほどになった。
 こうした状況で北京に乗り込むのは、それ自体、勇気が求められたのである。

「工藤君、君の熱意は分かるが、ここに至っては延期もやむを得ないのではないか」
 私のNPOの支援者からもこんな助言がなされるようになった。
 だが、ここで諦めたら、民間主導の対話を作り出すことはもうできないと考えた。こうなるともう志の勝負である。
 しかも、フォーラムまで2週間となった8月8日、日本の政治に激震が走った。郵政民営化法案の参議院の否決で小泉首相(当時)は衆議院を解散し、総選挙が始まったからだ。
 北京行きを決めていた政治家から私の携帯に電話が相次ぐようになった。参加辞退の通告だった。

今にして思えば、この時に北京に一緒に行っていただいた27人は日中関係やアジアの未来を民間の対話の力で切り拓こうとするリーダーだと私は思っている。
 安斎隆セブン銀行社長、白石隆政策研究大学院大学副学長、横山禎徳元マッキンゼー日本支社長、小島明日経センター会長、国分良成慶應義塾大学教授、渡辺正太郎経済同友会副代表幹事(当時)、木村伊量朝日新聞編集局長(同)、山田孝男毎日新聞編集局次長(同)など。
 企業経営者や学者やメディアの幹部など各界のオピニオンリーダーは、まさに手弁当で自ら北京に集まったのである。

日中のオピニオンリーダーが北京に集まった
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