甘い訴訟対策は命取り、サトウは第2次訴訟で再逆転狙う

「切り餅訴訟」が残した教訓

 

だが、前出の鮫島弁護士は、「あくまで一般論だが、結論が変わる判決を書くのであれば、1回の審理期日で打ち切りにせず、審理上の疑問点などをサトウに当て、反証を促すという訴訟指揮もあったはず。審理の迅速性は、当事者に十分な攻撃防御が保証されるという審理プロセスの十分性とのバランスの上になされるのが望ましい」とし、不意打ちを食らったサトウには多少同情的だ。

とはいえ、投資家を背負う上場会社が、高まる一方の法務リスクに無頓着であっては困る。コトが起きてからリカバリーするのでは、あまりにも非効率だ。

サトウがそうであったように、小粒な優良上場会社には、法務リスクに無頓着な会社が実に多い。優良であればあるほど、過去にほとんどトラブルを抱えた経験がなく、したがってトラブルを解決した経験もほとんどない。その分法務リスクの高まりにも鈍感なのだ。

弁護士の中には、いまだに100対0で勝つ気で臨むような立証活動は下品なことであるとか、過剰防衛はかえって裁判官の心証を害するなどと言ってはばからない人物が少なからずいる。

担当裁判官が過去にどんな事件でどんな判断を下しているかといった、基本的な情報収集もできないようであれば、そもそも雇うべきではない。上場会社たるもの、弁護士を値踏みできるくらいの能力がなければ、法務リスクへの備えが十分とはいえないだろう。

現在、東京地裁で第2次訴訟を担当している裁判官は、民事40部の東海林保裁判官である。先頃、サムスン対アップルの訴訟で、サムスンに軍配を上げ、アップルファンから売国奴呼ばわりされるなど、素人の間でも超がつくほど有名という希有な裁判官である。だが、アップルファンにとっては宿敵なのだろうが、「東京地裁の知財担当4カ部の裁判官の中では群を抜いて優秀な裁判官」との評価が、知財系の専門家から出る裁判官だ。

東海林裁判官ははたしてどんな判断を下すのか。そしてどんな判断が出ても、原告、被告ともに一歩も譲る気配がないこの訴訟。あらためて知財高裁に上がったとき、またもや飯村裁判官が担当する可能性もゼロではない。最終決着を見るのは当分先になりそうだ。

(ジャーナリスト・伊藤歩 撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)

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