甘い訴訟対策は命取り、サトウは第2次訴訟で再逆転狙う 「切り餅訴訟」が残した教訓
第1次訴訟での二審の逆転敗訴は、一審での立証活動が不十分だったことが大きく影響している。二審では1回目の弁論で、裁判官が原告、被告双方に追加の主張がないことを確認して終結、判決期日を11年9月10日に決めている。
最終判決には、この1回目の弁論の際、中間判決を出すことを伝えたうえで、弁論を終結したという記載がある。が、なぜか当日法廷にいた関係者は、被告側のみならず、原告側までもが、弁護士も含めて誰一人として、知財高裁の逆転判決を示唆する重大発言が裁判官の口から出たことを記憶していない。
中間判決は、ほぼ一審の記録をもとに出されており、9月10日当日に出廷してみたら最終判決ではなく中間判決。しかも一審での立証のずさんさがたたってサトウはあえなく逆転敗訴に至り、同社は仰天したというわけだ。
慌てたサトウ側は弁護士を替え、遅ればせながら大量の証拠を出して巻き返しを図ったが、「時機に後れた主張」だとして無視されてしまった。時機に後れた主張(時機に後れて提出された防御方法)とは、故意や重大な過失によって証拠の提出や主張が遅れてなされた場合は認めない、というもの。意図的に裁判を引き延ばす行為を避けるために設けられている。
とはいえ、第2次訴訟のうち、少なくとも対象製品が第1次訴訟と異なる部分については、一からの審理のやり直しになる。最高裁は第1次訴訟については門前払いしたので、第2次訴訟がなければ、日の目を見なかった大量証拠が審理される機会は永遠に訪れなかった。だからこそ、サトウ側は第2次訴訟を願ってもない好機ととらえたのである。
知財のプロからは、「第1次訴訟対象製品の追加請求はもちろんのこと、第2次訴訟対象製品についても、最高裁の結論に従って地裁は判断し、サトウはダブル敗訴になるのでは」との声も聞かれる。