長年の経験から「直間比率は9対1」 保木記録紙販売ファウンダー・保木将夫氏③

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ほき・まさお 1931年生まれ。55年文具小売業で独立。61年保木記録紙販売を設立し社長に就任。87年ホギメディカルと改称。同社は医療用不織布製品、滅菌用包装、各種医療用キット製品のトップメーカーとなる。50年にわたり経営を指揮。2007年よりファウンダー。

会社の運営に関して、私は直接費と間接費の割合は9対1が適正だと考えています。業種にかかわらず、普通は7対3が一般的です。私の計算では、7対3と9対1では三十数%も利益が違ってくる。要するに原価が3割安くなる。これだけ違うとかなり優位に立てます。

2004年に「オペラマスター」という医療機関向けのシステムを発売したところ、他社が低価格で参入してきました。二番手、三番手は地方に工場があり、低コストで製造できたのです。当社もコストを見直すことになり、直間比率9対1を目指しました。

それ以前から間接費を減らす努力はしていました。1980年代後半、上場準備のために経理の現場を見て歩いたとき、出荷、在庫管理の数字に間違いが多いことに気づきました。原因は入力時のミスです。

9対1を実現したからこそ、高い利益率を出せている

自分でもやってみましたが、入力は間違えるし、チェックでも見逃してしまう。決算になぜ何日もかかるかというと、こうした間違いを修正するのに時間がかかるからです。これでは駄目だと思いました。

そこで2人に同じ伝票を入力させて、二つの数字が一致したときだけ有効としたのです。すると間違いがすぐわかります。2人が同じ作業をするダブル入力はコストが高いと社内でも反対されましたが、結果としては断然安い。人数が少なくて済みます。さらに出荷の際の間違いをなくすために自動倉庫を作り、コンピュータシステムも一新しました。

 96年に本格的に操業を始めたインドネシア工場でも、日本人の管理職を減らし、取締役を現地の人に任せたことが生産性の向上につながりました。日本から1人赴任すると給料以外に月100万円かかるんです。しばらくは赤字が続くとの見通しだったのをもう一度見直させたら、4カ月でトントンになって、以降はずっと黒字です。1年で累積赤字を返済しました。ただで作っちゃったようなものです。その後、オペラマスター強化のため、本社を縮小し、自動化できるところはして、直間比率9対1を徹底しました。

直間比率9対1は経営論のどこにも書いていないから認められない、と言う経営評論家もいます。私が考えたんですから書いていなくて当然でしょう。経理でのダブル入力は、名だたる大企業が教えてくれと言ってきたので教えましたが、実践しているところは少ないようです。何かできない事情があるんでしょう。うちは9対1を実現したからこそ、高い利益率を出せているんです。

週刊東洋経済編集部
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