当社の製品で他社にまねできない技術を使ったものはわずかしかありません。その他の製品が売れているのは別の理由からです。
1970年代前半、病院の院内感染が社会問題化したのを機に、手術用ガウンなど、使い捨て不織布製品の製造販売を始めました。80年代にはデュポンの素材を導入し、本格的に事業を展開しました。
市場はジョンソン・エンド・ジョンソン、バクスター、そして当社の、3社の激しい競争となりました。相手は世界の2大メーカーです。しかも手術時に患者の体を覆う布では彼らが先行し、ノウハウを持っていました。作っても売れない。倉庫は在庫でいっぱいになる。そこで相手の弱点はどこかを考えたんです。
彼らのただ一つの弱点は日本に工場がないことでした。それを逆手に取り、個別対応で医師の要望を取り入れた製品を作りました。すると喜んで買ってくれる。ライバルも客を取られまいと米国本社にオーダーするのですが、でき上がるのに半年近くもかかっていました。
これで当社が優位に立ち、最終的には医療用の不織布製品で75%のシェアを獲得できたのです。
個別対応は収益アップを牽引する製品
やはり個別ニーズに対応することでトップシェアを守っているのが2004年発売の「オペラマスター」です。これは医療機関の経営効率化を目的に、手術用キット、物流、情報を総合的に管理するシステムです。手術の予約が入ると、電気メス、縫合糸など、手術に必要な材料のキットが発注され、前日に納入されます。手術準備の時間が大幅に短縮されるだけでなく、患者別、ドクター別の原価、スタッフや手術室の稼働状況なども把握できます。
このキットには各医師から指定された品を入れています。同じ注射器でもメーカーによって微妙に圧が違う。脊髄麻酔をするとき、指先の微妙な感覚で薬の量を調節しているんです。そこで手術別、ドクター別など、1万件以上のデータを蓄積して迅速に対応できるようにしました。これには他社も音を上げました。
オペラマスターは営業員の効率を上げるために、私が考え出した製品です。既存の手術用キットは個別対応でなく、最大公約数の品だけ入れたものです。それを手術別、ドクター別にすれば、品数が増え金額も膨らみます。まとめてどんと売ることができるのです。
個別対応は一見効率が悪そうですが、ユーザー本位のカスタマイズが強みとなり、収益アップを牽引する製品となっています。
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