部下を幸せにする課長、不幸にする課長 井戸川寿義著

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もうひとつは、相変わらず報告忘れの多い部下に対し、指導方法を変えて成功する方法だ。例えば、毎朝ミーティングを実施し、報告忘れの多い部下を含めて課員から報告を受ける。そして良い報告は褒め、良くない報告は直すべき点を具体的に指摘する。そして職場の雰囲気が良くなる。

こういう心理メカニズムが表に書き出されており、演劇シーンのように理解しやすい。

最後に本書の核心である「人情」と「道理」について紹介したい。「課長自ら率先して行う・示すことが望ましい言動」は、人情では「挨拶する」「笑顔で接する」「率先垂範する」「説明する」「報告する」「責任を取る」であり、道理では「自分の考えを示す」「夢がある」だ。

もうひとつの別ランクの「人情」と「道理」もある。「適切な時期に先手を打って行う言動」は、人情では「聴く」「感謝する」「褒める」「労う」「叱る」「相談に乗る」「任す」、であり、道理では「判断する」だ。

これらの言動の一つひとつが詳細に説明されている。ぜひ読んでもらいたい。いずれも課長に必要な言動という前に、社会人として、人間として大切な徳目だと思うが、多忙なビジネスの現場にいると忘れがちだ。

本書は「コミュニケーション」という言葉をまったく使っていないが、読み終えてから優れたコミュニケーションの解説書であることに気付いた。コミュニケーションについて重要性を説くビジネス本は多いが、抽象的で中身が曖昧だ。本書は、挨拶、笑顔、聴く、感謝する、労うなどを「言動」として具体的に説明している。これらはすべてコミュニケーションの要件だと思う。

(HRプロ嘱託研究員:佃光博=東洋経済HRオンライン)

日本能率協会マネジメントセンター 1575円

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