部下を幸せにする課長、不幸にする課長 井戸川寿義著

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本書の文体はわかりやすいので気付かない読者が多いと思うが、指摘は非常に鋭い。叙述の例を挙げよう。

課長研修でよく出てくる部下の問題は「部下が期待どおりの仕事をしてくれない」というものだ。そして研修に参加している課長は「部下が期待どおりの仕事をしてくれない」のは「部下の問題」だと考えている。ところがよくよく考えてみると、これは部下の問題ではないのだ。

「問題」とは「あるべき姿」と「現状」との乖離だ。「部下が期待したとおりの仕事をする」というあるべき姿に対し、「部下が期待したとおりの仕事をしてくれない」という現状の差異が問題だ。しかしこの「あるべき姿」を思い描いているのは誰だろう。部下がそう思っているのか? そうではない。課長が思っているのだ。とすれば「部下が期待どおりの仕事をしてくれない」のは課長の問題なのだ。こういう論理展開は鋭いと思う。

課長が「部下の問題」と他責的に考えている限り、問題は解決しない。自分の問題と自責的に考え始め、部下にその問題意識を伝えることから事態は改善していく。もっとも著者は「部下が期待したとおりの仕事をしてくれない」という表現は抽象的なので、もっと具体的に「依頼した納期までに報告がなかった」という具体的な事実に基づくことが重要だと説いている。

本書は表を多用しており、その多くは心理の流れだ。たとえば部下の指導で失敗するのは、相手の否定。何度も指導したが、部下の報告忘れが直らず、部下に対し否定的な態度をとるようになる。この行動は部下に自分は腹を立てているのだということを伝えたいからだ。もちろんこんな否定的な接し方では、部下は育たない。

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