一方、企業側は5~6月ごろに行われる面接・面談の中で履修履歴を活用する準備を進めている。経団連に加盟するある金融系企業は、今年から選考過程の中で学校の成績表を活用することを決めた。人事担当者は「これまで面接時に成績表を活用することはなかったが、経団連の手引きに従って実施するべきだと考えた」と打ち明ける。
別の大手企業の人事担当者も「成績表をこれまで以上に活用していく」と語る。理系の採用が多いメーカー企業からは「いままでも細かい技術の話を通して学習度合は把握できる」と、基本的にこれまで通りとする意見もあったが、履修履歴を活用する企業が増えていることは間違いない。
採用のための履修履歴の登録システム、データベースシステムを企業向けに提供している、大学成績センターの辻太一朗代表は、「システムへの登録企業は大手企業をはじめ200社以上」と語る。さらに、登録はないが、履修履歴面接を採用する企業はさらに多いのではと見ている。
経団連加盟企業は約1300社ほどで、そこには大手企業が名を連ねており、採用数が多い会社が少なくない。そうした企業が「採用に関する指針」にしたがって採用活動を行うとすれば、数の効果で一気に履修履歴を活用する動きがもっと顕在化する可能性はある。
選考時期が変わったことも活用を促す要因となりそうだ。そもそも4月が選考活動の解禁だった2年前までは、3年生の成績証明書の交付が間に合わないタイミングだったが、選考が6月以降となれば、成績証明書の入手の時間は十分に確保できる。
就活は履修登録から始まる
「履修履歴(成績表)の活用」と聞いて、学業の成績が採用の成否をより左右すると思う人も多いかもしれないが、活用法は少し異なる。
前述の金融系企業の人事担当者は、「人物を知る一つのツールとして、面接時の話のタネになれば」と語る。面接時に、その履修科目がどんな講義なのか、なぜそれを履修したかといったことを尋ねるという。
サークル活動やバイト経験など学生にとってアピールしやすい話だけでなく、学業にどう取り組んできたかという側面からも学生の力を見るというのが狙いとしてある。リクルートキャリア・就職みらい研究所の岡崎仁美所長も「その人を理解する判断材料が増えることはいいこと」と指摘する。
今の就活生にとっては、こうした履修についての質問にどう対応するか、回答を準備することが求められる。さらに履修履歴面接が広がれば、「なぜこの科目を履修したのか」という理由を思い描きながら、履修科目を決めることが求められていく。いってみれば3年生以下の学生にとっては、4月の履修登録は就職活動の第一歩になっていく。
当然それは、「面接でウケのいい科目」を履修する必要はなく、自分がどんな分野に興味があり、どんな勉強をしたいのかで科目を決めればいい。今後は、学生の本分でもある学業への取り組みも採用の判断材料となっていくことは間違いないだろう。
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