――ミスマッチ認定された人に対しては、具体的にどのように話をしますか。
「ミスマッチ制度」とは、あくまでマッチングができていないと言っているので、その人が悪いということがすべてではないんです。本人が努力することは前提だけれども、組織として採った以上、適材適所がうまくいっているのかとか、才能を開花させることができているのかを、われわれ人事がまず問い直す。
そのうえで、伝えるときは本人にびっくりさせないようにすることが大事。突然言われた、とならないように気をつけつつ、率直に言うことを恐れない。これは両方セットになります。最初に、お願いしても動いてくれないとか、足を引っ張るような事象があるという事実を指摘します。「足を引っ張ると聞いているんだけど、どう?」と投げかけて、きちんと本人の言い分を聞く。
そのうえで、「周りの社員に自分の課題を聞いて来て」と伝えます。そうすると、1カ月後に、同僚とか上司から課題が出てくるわけですが、本人からは、「まったく気づいていませんでした」「反省をしているから、一緒に改善してもらえませんか」という反応が返ってくることが多い。私は裁きたいわけじゃないし、裁けるほどその人と一緒に仕事をしていない。一緒に問題点に気づいて、改善することをやりたいわけです。
人間なんて相性があるというのが現実。レッドカードが出ていた社員が、異動して上司や仲間が変わると、表彰されるということもよくある。その人の持っている強みが、別部署の業務特性に合っていたということが起きるんですね。
「ミスマッチ制度なんて、まだやっているんですか?」
――異動をしても状況が変わらず、改善しなかった場合は、どういう結末になっている?
もちろん、ミスマッチとなって異動してもらったけど、どこに行っても合わないという人もいる。しかし、会社自体に本当に合ってないなら、お互い先の道を考えないといけない。僕らは無理に解雇することはいっさいしませんし、「辞めたらどうか」という言葉も使わない。あくまでも本人と対話を続けるしかありません。その過程で、対象者の50%程度は退職していきます。
正直、こういったことは、やりたい仕事かといったらそうではないかもしれない。でもわれわれ人事は、面談においては逃げも隠れもしません。ブラックボックスを作り、疑心暗鬼が生まれるような組織はよくない。人事も問題があるなら、糾弾されたってかまいません。
それでも、辞めるときに感謝されることもある。「厳しい現実だったけど、背中を押してもらってよかった。あのまま放置されていたら、自分はおかしくなっていた」と。
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