――「実力主義」ということは年功序列を捨てている?
はい。努力して成果を出している人の邪魔をすることはあってはならない。普段から仲良くさせていただいている、いろいろな会社の人事の先輩方から「年功序列にすると、大変だよ」と言われるんですよ。会社が変わっていくときに、社員も変われるような仕組みにしておいたほうがいいと。
マッチングしていない社員がいるのに、年齢が上というだけの理由で給料が多いという状況があったら、私は嫌なんですよね。「頑張っている人が報われる」会社にしたい。これがすごく重要なキーワードで、サイバーエージェントの人事の根底にある。頑張っている人から見て、白けるような状態をどれだけなくせるかということが大切。「ミスマッチ制度」も、この中のひとつに位置づけられています。
――日本型雇用の弊害を除去しつつ、よいところを残すという形ですね。
終身雇用のよさは残したい。しかし、最初から終身雇用が保証されていると、本人に悪気はなくても、会社にぶらさがっているという状況は起こりやすいですよね。それを、早めに気づかせてあげる。こういうシステムが、旧来の日本の企業にはないんですよ。「面倒くさい人だけど、言うのはやめておこう……」となって、問題を先送りにする。それで20~30年経って業績が悪化した段階で、終身雇用は無理だからリストラを、ということはやりたくない。
価値観の本質は「足を引っ張らない」こと
――サイバーエージェントが掲げる「21世紀を代表する会社を創る」という価値観は、かなり抽象的なものですが。
実は、スローガンとして掲げている「21世紀を代表する会社」の中身については、積極的に社として解釈しないと決めています。僕たちは「21世紀」がどうなるかなんてわかるほど優秀じゃないし、「代表する」ことがどういう意味になるのかは、一人ひとり違うからです。だからこそ、それぞれの社員が、「俺が、私が思う『21世紀を代表する』ってこういうことだ!」と主体的に発信して、議論できることが大切。それを続けられる人が、会社と価値観が一致する人なんです。
その中で求められるのが、チームプレーができて、周りと一緒に頑張ろうとする姿勢。ただ、チームプレーをする中で、ぶつかり合いがあることは当然ですから、熱い議論や、時にはケンカがあってもかまわない。しかし、前に進めるための協力がないのはダメ。たとえば、チームプレーでいつも反発ばかりしていたり、足を引っ張る人の名前が、ミスマッチ候補として上がってくる。
本人は頑張っていると感じているけど、周りから見ると全然頑張ってないんだけど……ということは、チームとしては起こりえる。本当はないのが理想ですけど、人間ってそんなに簡単ではないので。
周りからするとそう見えてない人たちに、早く気づいてもらいたいということが、ミスマッチ制度の根底。そのままでは、周りから評価もされず、成果もよくない。したがって給料も上がらない。こういう人を放置しておくことは、本人にもマイナスだし、頑張っている社員にとってもマイナス。それをはっきりさせたい。
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