「偽善者でもいい!」伊那食品のブレない哲学 達人経営者が極めた掃除哲学と凡事継続

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伊那食品の塚越寛会長(左)とイエローハットの鍵山秀三相談役

もう一人が、伊那食品工業の塚越寛会長です。遠く長野県から特別参加いただきました。帝人やトヨタグループ幹部が、わざわざ伊那の本社を見学に訪れることでも有名です。メディアでも再三取り上げられたため、日本全国で、塚越会長をご存知の方も多いと思います。

事前にご講演依頼を兼ねて、長野県の本社を訪問しました。「かんてんぱぱ」で知られる、社員430名の会社です。ボクはこれまでも多くの元気企業を取材して来ましたが、塚越会長の話を聞いて、これまでにない感銘を受けました。会社とはいったい何のために、そして誰のためにあるのか、改めて考えさせられました。

早朝から全社員で掃除活動

都心から離れ山々に囲まれた自然環境の中に、伊那食品工業があります。森林公園のような3万坪の敷地の中に、本社工場、R&Dセンターなどがあり、全体が「かんてんぱぱガーデン」となっています。

朝の7時半前後から、社員はそれぞれ自由に工場、本社、商業施設、ミュージアムなどの掃除を始めます。東京ド-ム2個分の緑豊かな環境を、社員全員の力で維持管理しているのです。ちりとり、ホウキ、草苅機、スイーパー、そして高い植木を剪定する高所作業車まであります。この作業車に女性社員が乗って、高い木の手入れをしているのにも驚きました。誰に命令された訳でもなく、自分で進んで作業車用免許を取りに行ったそうです。みな自発的に、お掃除を楽しんでいます。

塚越会長は、17歳の若さで肺結核を患い、その後3年間、闘病生活を送りました。肺結核は当時、不治の病と言われ、会長のお兄さんとお姉さんは肺結核で亡くなっています。さらにその下のお姉さんも発症して入院。続いて会長も同じ病気で入院し、姉弟で同じ病院にお世話になる、という事態になりました。お父様を終戦の年に亡くされているので、貧乏と病気、大変に苦労されたそうです。そのため会長は、社員が幸せになってもらうためにはとにかく健康でなければいかん、とおっしゃいます。

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