ANAHD社長「将来は宇宙を飛べる会社になる」 片野坂社長が語る、2兆円計画の真意とは?
――A380の導入は、昨年スカイマークの再建支援者を決める際、同社の大口債権者だったエアバスの支持を得るためだったとの見方もある。
機材の選定や検討のタイミングと、スカイマークのスポンサーを決める時期がたまたま重なった。われわれが導入を決めるうえで背中を押すきっかけになったのは事実。だが、スカイマークの件があるから、ということで買ったということはない。機材購入には経済合理性を説明しなければならないからだ。
――これだけ事業規模が拡大すると、人員の確保も重要な課題になる。
ANAのパイロットの確保は心配していない。現在の機材数は約250で、5年後には275になる。これは毎年5機増えるというペースなので容易に乗員は確保できる。これまでには1年に10機というときもあった。客室乗務員はパイロット以上に提供座席数に比例するので現在の約7000人から9000人ほどに増える予定だ。
全体でいえば現在3万6000人のところ、5年後には3万9000人となる。空港のフロント要員など、労働力不足のところは多い。離職率の高いグループ会社もあり、そういうところは採用や訓練のコストがかさむ。
今、子会社に呼びかけているのは、ベースアップや一時金の充実、職場環境の改善で採用競争力が高めてほしいということ。ずっと働きたいという社員が増えれば、モラル向上にもつながり、会社のエネルギーとなる。人に投資することは、中期戦略でも重要な項目だ。
100年後は宇宙を飛べる会社に
――中期戦略には「世界のリーディングエアライングループになる」とある。日本航空(JAL)との競争関係ばかりが注目されるが、世界の会社を目指す上で意識している企業はあるか。
アジアを代表するエアラインになる、というときにお手本としてきたのはシンガポール航空だ。サービス品質の調査では、日本のビジネスパーソンの評価が非常に高く、つねに意識している。
航空以外で言えば、米化学メーカーのデュポンだ。歴史をひもとくと、驚くほど事業を転換している。100年単位で、ダーウィンの進化論のように環境に合わせて会社を変える、ダイナミックなエネルギーはすばらしい。
今の世の中はインターネットが出てきて、本当に変化が激しくなった。一番恐いのはインターネットで便利になり、人が移動しなくなることだ。旅行をしなくても、スマートフォンでアフリカの映像を見ることができる。
ただ、今のところはフェイス・トゥ・フェイスの会議があったり、実際に見たり、触ったりしてみたいという需要がある。運輸業の果たす役割は当面は続くと思う。
私が入社した当時、社内報に「将来は宇宙を飛んでいたい」と書いた。そういう時代が50年~100年後には来るかもしれない。だから、デュポンのように柔軟に事業を転換していく会社を目指したい。
(撮影:尾形文繁)
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