ANAHD社長「将来は宇宙を飛べる会社になる」 片野坂社長が語る、2兆円計画の真意とは?
われわれの路線展開は欧州の次は北米、北米の次はアジアや中国、と特定の地域に集中することなく回っている。私は「らせん展開」と呼んでいる。全方面にバランスよくやっていけば、(テロなどの)地政学リスクにも耐えられる。
(主要都市には一通り飛ばしてきたので)今後は収益的に「おいしい」路線がなくなり、これからは収益の厳しい「セカンダリーマーケット」が中心になってくると思っていた。
だが、昨年就航した米ヒューストンやマレーシアのクアラルンプール、ベルギーのブリュッセルは最初から搭乗率がよかったので驚いた。これらの都市へ飛ぶのに、今まで乗り継ぎ便を利用していた人たちが、われわれの直行便に流れてきているからだ。
私がよく言うのは「トライ、ジャストフライ」という言葉。海外進出にあたって土地を借り、建物を建て、人を雇い、設備を置かなければならない製造業とは違い、航空会社は線路を敷く必要もなく、滑走路とベイ(駐機スペース)があれば飛ばすことができる。
2~3年やってみてどうしても厳しければ休止すればいい。これまでも休止した路線はある。その中で、デリーやムンバイ、ジャカルタなど再開したものもある。
リゾートを狙う理由は何か?
――ANAはこれまでビジネス路線を重視してきた。その中でリゾート重視の姿勢を打ち出した理由は?
法人需要をしっかりつかんだことは、2004年に達成した国際線の黒字化に大きく貢献した。これは間違っていなかったし、今後もビジネス路線は重要だと思っている。ただ国際線が軌道に乗ったので、大きな方針の追加としてリゾートを開拓していく。
リゾートは路線自体だけでなく、「マーケット」としてとらえている。レジャー需要が中心で単価が安いと思われがちだが、富裕層がいる。別荘を持つ人は1年に何度も行くし、大きなゴルフコンペや国際会議など、イベント需要も取り込める。ホワイトスポットというのは、路線だけでなく、われわれが見てこなかった顧客層にもある。
リゾートの中でも王道がハワイ。これまでは中型機(現在はボーイング「B787-9」)で搭乗率が9割を超えており、収容能力が足りなかった。そして富裕層を取り込むには、(ハワイ線では珍しい)ファーストクラスを入れたい。そうなると、世界で一番大きい飛行機であるエアバスの「A380」がごく自然に候補に浮上した。
――ただ、大型機はボーイングの「B777」がANAの主要機材になるはずだが。
われわれの機材戦略の中で大型機は当面「777」です。今の主力機「777-300ER」のほか、「777-9X」も多数購入した。これがメインであることに変わりはない。調達する「A380」は3機で、リゾートマーケットに特化して活用する。全社の機材計画に方針の変更があったというわけではない。
A380は普通の飛行機の倍の大きさだ。予備エンジンはリースで調達するし、大きな整備は外注して低コスト体制で進める。
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