パイロットは「空のすばらしさ」を知っている 空を飛ぶことは「つながりを見つける行為」

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美しい瞬間の数々。しかしどんなに素晴らしい風景も、数えきれないほど目にするうちに徐々にありふれたものなっていく。

観光地に対して、近所に住む人が観光客とは異なる印象を抱くように、長年飛び回っていれば多少なりとも慣れが生じてくるはずだ。

「日常」になって初めて浮かび上がる顔がある

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だが、すぐそばに住んでいるからこそ見えてくる魅力があるように、空にもそれが「日常」になって初めて浮かび上がる顔がある。全体に満ちているのは、驚きや興奮というよりも、慈しみの眼差しだ。

本書の一番の読みどころは、長距離線の経験値や文章の巧みさではなく、見慣れた世界を誰よりも生き生きと受け止める著者の感受性なのかもしれない。

旅好きには間違いなくオススメの一冊と言えるだろう。インドの空港に着陸した時に漂う香りについて語るのはまあ分かるとして、さらにトリポリ(リビア)の空港の雰囲気はピッツバーグの空港とはだいぶ違う、といった話にまで及ぶのは、やはり正真正銘の「旅のガイドブック」である航空会社のクルーならではである。旅に出たくなるだけでなく、今まで旅だと思っていなかったところにも「旅」を感じることができるのだ。

途中で何度も空想の世界に連れていかれ、読むのに意外と時間がかかった。「うわの空」という言葉がこれほどしっくりくることもないだろう。コックピットに入れなくても、窓際の席を取れなくても、旅行に行く暇がなくても、読み進める時間そのものが快適な空の旅なのだ。次に旅行へ行く時は、窓際の席にこだわりたい。フライトは単なる移動手段ではなく、ひとつの旅であることを本書は教えてくれたのだ。

峰尾 健一 HONZ

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みねお けんいち / Kenichi Mineo

HONZ学生メンバー。1993年、横浜生まれ。横浜市立大学在学中。5歳から高校卒業までを秋田県で過ごし、大学入学と同時に横浜へカムバック。基本的に乱読派のため、好きなジャンルを絞りきれず困っている。最近は日本文化、音楽などに興味あり。

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