中野:投資の世界でも、AIを使ってアセットアロケーションを決定する、ロボットアドバイザーを導入する動きが出始めていますね。
渋澤:金融理論におけるランダムの考え方って、現在のプライスに対して、次のプライスがランダムに決まることを前提に組み立てていくわけじゃないですか。だからAIを用いて、ランダムな価格に過去の経験則をインプットすると、こういう動きになった時は、次にこう動くだろうということを、自動的に予測してくれるわけですね、きっと。
中野:ただ、伝統的なクオンツ運用って、まさにそういうことですよね。バックテストを行って、これだけのリターンが得られるシステムだから、これから先の運用にも有効ではないかというのですが、それがうまくいったためしって、少なくとも私の経験則では一度もないんですよ。
だから、「バックミラーを見て運転する」って言われるのですが、過去の経験則を大量にインプットしたとしても、それで本当に未来が読めるのかと言えば、はなはだ疑問です。
藤野:でも、囲碁AIのアルファ碁は、過去の対局を読み込んで、そこから勝利パターンをつねに検証しているわけですよ。しかも、ディープラーニングによって、つねに自己学習も進めている。こうなると、人間の思考スピードよりもはるかに速く、AIが未来を読み込めるようになるのではないか、と思うわけです。
過去100年のデータをインプットしたらどうなる
渋澤:ただ、ゲームと市場の違いはあるんじゃないかな。囲碁AIに過去の棋譜をプログラミングすることは可能ですが、市場の場合、プログラミングし切れないものがたくさんあります。たとえば天気とか。過去100年の、この年の、この日の天気はこうでした、気温はこうでしたとかね。その過去のデータを、これから100%インプットすること自体が難しいでしょう。
藤野:ただ、この100年間にいろいろなことがありましたからね。戦争、テロ、天災、異常気象など、挙げればきりがないほどです。それらの事象をすべてスーパーコンピュータにインプットして計算させれば、これはもう人間では敵わないくらいのスピードで意思決定が出来るのではないでしょうか。過去のほとんどのデータを覚え込んでいて、どういうパターンが導き出せるのかを計算できる人がそこに立っていたら、どうしても勝てる気がしません。
渋澤:機械が人間に勝つというよりも、機械が想定外の事態に直面した時、自滅してしまうようなことが起こりうるでしょうね。
中野:コンピュータの弱点は謙虚さがないことです。完璧であることが前提ですから、絶対に負けないと言っているのに等しいわけでしょう。
渋澤:インプットのパラメーターの中ではそうかも知れませんが、それ以外のものが入ってきてしまうと、それを処理するためには、またデータベースを新たに書き換えていく必要があるわけですよね。
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