渋澤:それはものすごく奥深い議論になって、時間がいくらあっても足りなくなる。話を元に戻すと、人間って、勝ち負けや、儲かった、損をしたということだけでは、たぶん幸せになれないと思うのです。おカネが儲かれば幸せかというと、決してそうではないという人は大勢いますし、逆におカネがなくても、幸せを感じる人もいます。
本来、おカネがたくさんあるほど幸せであるということからすれば、それらはある意味、矛盾していますが、人間の世界には矛盾がたくさんあって、その矛盾から次の発展やクリエイティビティが生まれます。ただ、AIはロジカルな世界観であり、ロジックは矛盾を排するもの。一方、ロジックだけに頼っていると、究極的には、資産運用には未来がないということになります。
中野:完璧を目指すAIの行き着くところは皆、同じ答えです。
すでに起こっているアルゴリズムの暴走
藤野:そこで私が恐れていることが、ひとつあるのです。投資は超短期から超長期まで、さまざまな時間軸があって、それぞれ異なる意思決定を行っているわけですが、長期投資であれば、まだAIに勝てる余地は残されていると思います。
しかし、その時間的な余地は、ほんの数年程度しかないかも知れない。そういう危機感を最近、抱いています。実際、超短期ではアルゴリズムトレードがバンバン稼働していて、売買高に占める比率が非常に大きくなっています。そして、ある事象に対して、アルゴリズムが同じ方向の判断を下すことによって、マーケットが大暴騰したり、大暴落したりすることが、現に起こっています。だから、実際に何が起るかは明確に見えていないのですが、恐らくこの1年程度で、歴史的な、非常に大きな出来事が起こるのではないでしょうか。
中野:AIがほぼ完璧に近い状態のものだとしたならば、そのAIが将来下す投資判断は、ほかの超優秀なAIが下す投資判断と、ほぼ同じになります。それはそうですよね。
すべてのAIが、最適解を求めているわけですから、答えが違うはずないのです。そうなると、非常に優秀なAIを用いたファンドが複数あった場合、各ファンドのパフォーマンスに差が生じなくなるのと共に、すべてのファンドが同じ投資行動を取るため、マーケットの価格形成機能が失われてしまう恐れが生じます。
このように突き詰めていくと、人間のファンドマネジャーが皆、職を失うところまでAIに支配されたら、資産運用ビジネスそのものが成り立たなくなる、言い換えればAIが支配する資本市場は本来の資本市場として機能を失うと考えるのが妥当ではないでしょうか。
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