アイアンの音を酒のつまみにしたいくらいだ 「チーム松山」しか語れない松山英樹論<前編>

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言うまでもなく「根に持たれている」は松山と藤本氏が親しい間柄ゆえのジョークだ。たとえ遠くからであっても、無名のアマチュア時代から自分を眺め続けてくれている藤本氏に対し、松山は少なからずリスペクトの念を持っていることが垣間見える。

藤本氏がしみじみと、こんな秘話を明かしてくれた。

ギア担当として松山の秀逸性を語るダンロップスポーツの藤本哲朗氏

「私が松山プロと一緒にいていちばん好きな時間は、日暮れどきの静かな練習場で彼がアイアンで球を打つ音を聞いているときです。とりわけ、ロングアイアンの乾いた音が心地いい。打席の後ろの地面に腰を下ろし、以前なら3番アイアン、今なら4番アイアンで打つ姿を真後ろから眺め、あの打球音を聞きながら、彼方へ力強く飛んでいくボールを眺める時間が最高なんです。

『これをつまみに、お酒が飲みたいぐらいだ』って松山プロに言ったら、そのときは笑われました。でも、その後は、練習場でロングアイアンを持つたびに私がわくわくしているのを感じるのか、『哲朗さん、ロングアイアンの音、ホントに好きっすよね』って言ってくれました」

球をとらえる音は技術やパワーの表われだと藤本氏は言う。その音に松山の秀逸性を感じ取る藤本氏のギア担当者としての感性。松山は、そこにリスペクトを払っているからこそ、藤本氏の“好み”を言い当て、うれしそうに笑ったのだろう。

ヒデキのメディア対応、英語は上達している

松山の現地マネージャー兼通訳を務めているのはボブ・ターナー氏。かつて早稲田大学に留学し、体育会ゴルフ部に所属していたターナー氏は、ゴルフがわかり、日本語が堪能な米国人ということで、これまで尾崎直道をはじめ数多くの日本人選手を米国で世話してきた。息子のアラン・ターナー氏は現在、メジャーリーグでイチローをサポートしており、スケジュールによっては息子のアランが松山をサポートすることもあるのだが、松山のメイン担当はあくまでも父親のほうのターナー氏だ。

「私が初めてヒデキを見たのは、彼がローアマを獲った2011年のマスターズでした。でも当時は彼のことをよく知らなかった。背が高い大学生だなあと思ったことはよく覚えています。私が正式にマネージャー兼通訳になったのは彼が米ツアー出場権を獲った年からです」

それから3年が経とうとしている今、ターナー氏から見て松山が一番成長したと思えるのはどこかと尋ねたら、「メディアへの対応」とターナー氏は即答した。

「そもそも彼はゴルフクラブとトーク(talk)しながら成長してきたようなものだし、とてもシャイだから、最初のころはメディアの質問に短い一言で答えるのがやっとでした。でも今は、成績にかかわらず、毎日きちんと対応できるようになった。その成長ぶりは、すごいですよね」

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