日銀は弾切れか、それとも限界はないのか 「効かないけどやめられない」緩和依存症

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IMF(国際通貨基金)は昨年8月、「日本のポートフォリオ・リバランス」と題するスタッフ論文の中で「銀行や保険会社などの担保ニーズを踏まえると、現状の国債買い入れは2017~2018年に限界がくる」と指摘した。国債残高が有限である以上、量的・質的緩和を永遠に続けられるわけではない。

年間80兆円のペースで国債を買い占める量的・質的緩和を採用しても狙った効果が現れず、金利をマイナス領域に誘導する政策を採用しても、世間の評判は散々だ。その結果、かつてならエコノミストの「頭の体操」程度にしか思われていなかった過激な政策にどんどん踏み込んでいる。

議論される「究極の政策」

最近、世界のエコノミストらが盛んに議論しているのは、ヘリコプターマネー(ドロップ)政策の是非だ。

ヘリコプターマネーとは、中央銀行に直接国債を引き受けさせることで政府が財源を調達し、あたかもヘリコプターを操縦して空からお金をばら撒くような、一種究極の政策だ。ミルトン・フリードマンが主張し、最近ではFRB(米連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ前議長が大学教授時代に「日銀はケチャップを買え」と唱えて有名になった。

たとえば、英国の金融庁長官を務めたアデア・ターナー氏は2015年11月に開かれたIMF(国際通貨基金)のコンファレンスに提出したペーパーの中で、「マネタリーファイナンス(ヘリコプターマネーのこと)に関する技術的な問題はすでに十分理解されており、技術的な実現可能性などは疑う余地はない。本当に重要な問題はすべて政治的な問題だ」などと述べている。

日銀はすでに毎年、新規発行額の2倍近い国債を買い続けており、事実上この状態に近いが、ターナー氏の定義によると、日本の現状はまだマネタリーファイナンス状態ではないようだ。

中央銀行に「限界はない」のか、それとも政策手段が「弾切れ」に陥りつつあるのか。金融政策はいよいよ、壮大な社会実験の色合いを帯び始めてきた。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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