ホークス新拠点「選手と共に育つ街」の大勝負 周辺地域の力を結集、山積みの課題に挑んだ
人気球団であるホークスのホームタウンになることで、確かに知名度アップにはつながるが、約3000席の座席数では1軍戦の規模の集客は見込めない。今後観光客が増えたとしても、地元の経済が急激に潤うわけではないだろう。球団との契約条件は「無償貸与」だが、土地取得や造成には、大きな費用がかかっている。
「議会では『(球団に)賃料をいただいた方がいいのではないか』という意見も出ました。でも最終的には、20年の契約期間で見込める固定資産税と選手の住民税等で整備にかかった費用を回収できる、という見立てができました」(江崎さん)
基本協定を結ぶまで、球団との協議は少なくとも週2回以上。メールのやりとりは数えきれないほどだった。そこには、厳しい交渉もあった。
「税金の減額等についての要望もいただきました。球団には利益追求という企業としての責任がある一方、市には公共サービスの充実という目的がある。お互いに、どうしても合わない部分は出てきます。その折り合いをつけるのが難しかったですね。結果的には球団側が協力的に応じてくださったので、うまくまとまったと思います」(江崎さん)
少年野球チームも現役選手が盛り上げる
その後も細かな調整を重ね、2014年11月28日にようやく土地使用貸借契約締結の運びとなった。
この両者の「すり合わせ」と並行し、さまざまな提携が進んでいる。同年7月には筑後市・柳川市・八女市・大川市・みやま市・三潴郡大木町・八女郡広川町の5市2町からなる「筑後七国」と球団の間で、地域連携協定を締結。1軍戦の観戦招待や選手・OBによる野球教室の開催、広報誌でのPR活動等について、相互協力を約束した。シーズンオフには筑後七国の少年野球チームを対象に、現役選手による野球教室が始まった。
筑後市単体では、2016年1月に球団と地域包括連携協定を結んでいる。こちらはホームタウンならではの取り組みで、野球以外にも多方面で協力をしていくという内容だ。たとえば選手やOBが学校を訪問して開催する野球教室や、スタジアムでの市のイベント開催など、市民だけが体験できる特別なプログラムを計画しているという。
ファームの完成を心待ちにしていたのは、もちろん子どもたちばかりではない。都市部に比べて娯楽が少ないエリアだけに、市民の関心が高く、工事中も状況を見に訪れる人が後を絶たなかった。
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