凍結する欧州経済--世界金融危機いまだ去らず
被害は新興国だけにとどまらない。欧州は一蓮托生。新興国経済の混迷は瞬時に他国へ伝播した。
欧州各国の銀行は従来から同地域への貸し出しを積極化。欧州の新興国全体への融資ではオーストリアの銀行が2100億ユーロ余りと最も多い。貸出残高は対GDP比で5割を超す。中でもラトビア、エストニア、リトアニアの「バルト3国」への融資では、スウェーデンの銀行が突出している(132ページ参照)。欧州の対新興国貸し出しのうち、3国向けが8割近くを占めた。
特にラトビアは自国通貨ラトとユーロのペッグ(連動)制を導入しており、ラトの切り下げ懸念が燻(くすぶ)る。同国向け融資額の8割以上がユーロ建て。切り下げに踏み切れば、債務はますます膨らむ。ラトビアが債務返済に窮するようだと、積極的に融資を行っていた欧州域内の銀行経営を大きく揺るがすのは必至。同じくユーロとのペッグ制を採用する他のバルト2カ国やブルガリアなどの経済にも飛び火しかねない。
スウェーデンやオーストリアなど新興国向け融資の焦げ付き不安を抱えるのは、いずれも比較的小さい国の銀行だ。欧州統合による単一の金融市場形成の過程で、各国の銀行による貸し出し合戦が熾烈化したことと無関係ではなかろう。