凍結する欧州経済--世界金融危機いまだ去らず
むろん、こうした雇用環境悪化はフランスに限った現象ではない。失業への恐怖は欧州全域を襲う。
欧州ではもともと失業率が高水準にある。背景には「労働市場の硬直化」が潜む。企業の雇用政策には制約が多く、米国に比べると景気や企業業績の変動に応じた機動的な対応が難しい。その結果、人材の流動化は進まず、景気後退局面では大学を卒業したばかりの若年層の就職難などに拍車がかかる。
経済・金融危機の直撃を受けたことで、失業問題は深刻化するばかりだ。7月のユーロ圏16カ国の失業率は9・5%に達した。15カ月連続の上昇だが、実はドイツの「クルツアルバイト」と呼ばれる短時間労働の制度などが一段の悪化を食い止めている面もある。同制度は勤め先企業の労働時間短縮で減少した給料の差額の一部を政府が補填する仕組み。従業員は支援を受けている期間中、解雇されずに済む。
だが、「ドイツは特に健全財政志向が強い国」(三菱UFJ証券の中沢剛シニア債券ストラテジスト)。予算が尽きてしまえば同制度の維持は難しく、失業率が一気にハネ上がるシナリオも考えられる。近い将来の2ケタ台乗せはほぼ確実な情勢だ。
そんな情勢下で、4~6月期の実質国内総生産(GDP)の前期比伸び率は「ポジティブサプライズ」となった。ユーロ圏は0・1%減。欧州連合(EU)加盟27カ国では同