凍結する欧州経済--世界金融危機いまだ去らず
さらに、多くの投資家は欧州金融機関の資産内容に懐疑的だ。米銀に比べて会計基準が厳密ではないとみられており、「証券化商品の隠れ損失が存在する」との見方が“通説”になりつつある。
隠れ損失などの顕在化で金融機関のバランスシートが劣化すれば、「信用収縮による景気下振れ圧力が強まる可能性もある」(ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり主任研究員)。金融機関の貸し出し余力が奪われることで、間接金融主体の欧州経済の傷は深まる。不良債権も膨れ上がって金融機関は一段と疲弊し、貸し渋りへ傾く--。こうした負の連鎖に陥るシナリオも否定できない。
一方、混迷打開に向けた動きも出てきた。ドイツでは不良資産を銀行本体から切り離す「バッドバンク」法案が議会を通過した。同計画は納税者負担を回避し、銀行の株主がバッドバンクの最終的な損失に対して責任を負うスキームだ。しかし、今のところ、手を挙げる銀行は現れていない。金融問題の完全解決への道筋はいまだ不透明だ。
GDP比で5割超す 新興国向け貸し出し
欧州経済の回復を阻む足かせはもう一つある。「新興国ショック」ともいえる中・東欧問題だ。
海外からの投融資に支えられた成長モデルが世界的な金融危機のあおりを受けて瓦解。ハンガリー、ルーマニア、ラトビアなど中・東欧地域で、国際通貨基金(IMF)やEUの金融支援を受けるケースが相次いだ。