一流の物語は「救いなき残酷さ」を避けず描く 「桃太郎」が今なお日本一の昔話である背景

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そういう本質を持つからこそ、クリエイターは、悪という存在を描かなければならない。

こういうと、例えば「泣いた赤鬼」や「スター・ウォーズ」は、悪を描ききってないではないかという反論をする人もいる。「泣いた赤鬼」は、鬼の人間的な側面を描いた感動作であるし、「スター・ウォーズ」は、悪の善的側面を描いたからこそこれだけヒットしたのだと。

巨大な残酷さが隠れ潜む

確かに、これらの作品は一見、悪の善的側面を描いているようにも見えるが、しかしその裏には、巨大な残酷さが隠れ潜んでいる。ルークは、悪党の象徴であるダース・ベイダーこそ殺さなかったものの、雑魚の悪なら夥しいほどの数を殺している。「泣いた赤鬼」も、赤鬼の側から見れば感動するような話かもしれないが、その反対に青鬼は全くといっていいほど救いがなく、その意味では残酷きわまりない物語となっている。

このように、一見悪の善的側面を描いているように見える名作も、その裏にはおぞましいまでの残酷さがちゃんと描かれている。「救いのなさ」がちゃんとあるのである。

そういうふうに、名作には必ず何らかの「身も蓋もなさ」がある。逆にいえば、それがなければ名作とはなり得ない。

だから、一流のクリエイターになるとするなら、そういう「身も蓋もなさ」を作品に盛り込まなければならない。それは則ち、悪を悪として描かなければならない。そういう覚悟を持てた人間だけが、一流のクリエイターになれるのである。

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岩崎 夏海 作家

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いわさき なつみ / Natsumi Iwasaki

1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著『部屋を活かせば人生が変わる』(累計3万部)などがある。

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