一流の物語は「救いなき残酷さ」を避けず描く

「桃太郎」が今なお日本一の昔話である背景

昔話から大ヒット映画まで、人を魅了する「優れたお話し」の共通点とは?(写真:リリィ / PIXTA)
長年コンテンツ業界で仕事をしてきた岩崎夏海氏が、その中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代のライフスタイル感をつづります。本記事は岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」(夜間飛行)からお届け。

「絶対悪」を描くことの難しさ

当記事はプレタポルテ(運営:夜間飛行)の提供記事です

おそらく多くのクリエイターにとって、一流への壁となるのは「悪」の存在ではないだろうか。悪のとらえ方に逡巡を抱いてしまう。有り体にいうと悪を描けない。特に「絶対悪」を描けない。

「絶対悪」というのは、とにかくただただ悪い存在だ。作中で殺されて然るべき存在である。殺されてむしろスカッとするような存在だ。そういう絶対悪をどうして描けないかというと、作者が彼らの存在を慮ってしまうからである。気を遣ってしまうのだ。

「彼らもまた生きているのではないか? だとしたら、たとえ絶対悪であろうと、殺したらそれは人殺しなのではないか?」

そういう逡巡が頭をかすめるのである。

そういう絶対悪が出てくるような物語を、稚拙で、つまらないものと断罪する人間も多い。それは、むしろクリエイターに多い。創作を行う人間というのは、どうしてもいろいろと考える。考えるうちに、やがて上記の「彼らもまた生きているのではないか?」という問題に突き当たる。そして、それが壁となって、それ以上前に進めなくなるのだ。それがボトルネックになってしまうのである。

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