“アマゾン品質”の秘密に迫る、日本人も虜にするカイゼン経営《アマゾンの正体》

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摩擦を避けながら顧客のニーズを実現

今でも書籍の購入者がアマゾンの“鉄板”のコアユーザーである。そのコアユーザーの利便性を高めるために、業界特有のタブーにも挑んできた。が、ここでもアマゾン流がある。業界との大きな摩擦を避けながらカベを乗り越えてきたのだ。アマゾンが書籍販売で他社を寄せつけない強みを持つようになった一つの理由が「マーケットプレイス」の成功だ。ここでは第三者が新古本を出品。新品にひも付けされる形で検索できるようになった。まだ書店で流通している本の横に新古本が並んでいれば、新品の売り上げに影響を与えるため、出版社としては面白くない。出版業界の“インサイダー”である取次が出資しているようなオンライン書店や、書店が運営しているオンラインサービスでは、とてもできない芸当だ。

が、新古本に対する顧客ニーズは強力。ブックオフ・コーポレーションのような専門店のほか、フタバ図書のように早くから新品と新古本を併売する書店だってある。「私たちは何も新しいことをしているわけではないですよ」と言われてしまえば、出版社側は強くは抗議できない。

割引販売も、そうだ。今年1月、出版業界ではアマゾンが打ち出したある割引販売が「事実上の再販破り」として、話題になった。早稲田大学の関係者向けに「アマゾンギフト券サービス」を開始。アマゾンの和書を15万円まで割引価格で買えるようにした。問題視されたのがその割引率。教職員、学生、早稲田カードを持つOBは8%引き、校友会費を納入しているOBは3%引きだ。

インサイダーたちのこれまでの申し合わせは「書店におけるサービスは販売価格の2%程度の景品に限る」というもの。が、実際には守られてはいない。しかも、これまでも大学生協では10%引きで売られてきた。組合員向けサービスのはずが、一般顧客にも売っている例が多く事実上、割引価格は浸透していた。アマゾンにとって大学関係者は本を大量に買う重要顧客。アマゾンはその顧客ニーズを聞き前例に従って割引を行ったにすぎない。生協とアマゾンでは品ぞろえに大差があり、インパクトがまったく違うのだが、「何も新しいことをしているわけではない」と涼しい顔をしていられるのだ。

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