阿部寛も「覚悟」した過酷すぎる映画の真実

監督が壮絶な「エヴェレスト」撮影を語る

――1990年の『マリアの胃袋』で監督デビューを果たしてからおよそ26年の月日が流れたわけですが。今までのキャリアを振り返っていかがですか。

僕が映画を始めた頃と今とは違います。当然、昔はCGがなかったですし。撮影もフィルムでやっていましたから。撮影がデジタルに変わってきたことで、映画作りそのものが変わってきたかなという感じはします。でもこれはよく考えたら必然だろうという気もするんですよ。映画の世界も、サイレントからトーキーへ、モノクロからカラーへと少しずつ進歩してきたわけですから。でも、いろんなことが変わってきたとしても基本は、しっかりと台本を作って、きっちりとスタッフを集めるのが根底。やはり台本作りには時間をかけますし、技術を磨くということは、これからも変わらないのではという気はします。

3年間は作品の反省をするな

「撮影現場はビスタリ、ビスタリでした」 (c)2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会

――平山監督のことを、人間ドラマが得意な職人監督と評する人もいますが、ご自身ではそういった意識はありますか。

自分では自分のことをアーティスティックだとは思っていないですね。一概には言えないですけど、僕の場合は、撮影が始まってから音入れが終わるまでの過程を楽しんでいるのかな。作っている最中にそれがうまくいったら、作品的にはよかったねと言われるし、ダメな場合はごめんなさいということになる。

もちろん映画ってお客さんに見てもらえてナンボだと言うのが前提なのですが、映画作りは最初から価値が1個じゃないと思っています。左を向いたり、上を向いたり、グルグルしながらやっと最後にたどり着くもの。それがいいとなれば「うれしいね」となるし、ダメだったら、仕事もなくなる。そういうことの繰り返しでした。だからスタート地点で、自分の映画がどういう映画になるんだろう、ということはまったく見えないですね。

現場にあるものを撮って、それを積み重ねていくだけ。そうして編集してみると、全然違う価値観が見えてくることもありますよ。そうすると頭を抱えたり、もしくは「やったね」と、喜んだりの繰り返しなんですね。だからきっと答えがないんでしょうね。僕は26年間、こっちに行ったり、あっちに行ったりしながらでしたから。まっすぐな一本道を歩んできたという感じはまったくないですね。

――監督という職業をしていくうえで心がけていることはありますか。

以前、1本だけ助監督でついた藤田敏八監督とお酒を飲んでいる時に、「お前もそのうち映画監督になるだろうけど、作品作って3年間は反省しちゃダメだよ」と言われたことがあって。それを真に受けて、反省しない歴史があります。やはり映画って、そこに携わった人間がいっぱいいるわけですよ。あのカットはダメだったなと思うと、それを撮ったカメラマンがいるわけじゃないですか。あの芝居はよくなかったな、と言うとそれを演じた俳優さんがいるわけですから。「でも3年もたったらみんな記憶もおぼろげになって、忘れているだろうから、その時は名指しで悪口を言ってもいいけど、3年間くらいは言わないほうがいいよ」と言われて。それはなるほどなと思いましたし、自分の中でも重要視していますね。

でも映画って残酷なもので、一生懸命頑張って命がけで撮ってきたカットを編集で切ることもあるわけじゃないですか。だからそれは裏表一体ですね。傲慢な部分とそうじゃない部分がある人種なんです。1人ではできないという意味では民主主義なんだけど、一方で独裁的な面もある。でも僕は最終的には映画が残ればいいなと思っていますから。僕自身はまったく面白くない男ですから。『エヴェレスト 神々の山嶺』が面白くて、どうやらあれを監督したのは平山という監督らしいと。そういうのがベストですね。

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