震災から5年、被災者に牙をむく「防災道路」 宮城県山元町で起きた復興事業の不条理

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かさ上げ道路よりも海側に取り残された岩佐好之さん

津波から生命を守るための防災目的の道路が、住民を脅かす存在になっている。

福島県と境を接する宮城県最南部の山元町。「仙台いちご」の主産地として知られる約1万2000人が暮らす町で、前代未聞の震災復興事業が進められようとしている。

東日本大震災による大津波で600人以上の犠牲者を出したことを踏まえ、山元町では海岸線に沿って高さ7メートルの防潮堤が築き上げられるとともに、海から約1キロメートル離れた内陸部に高さ5メートルの「かさ上げ道路」(盛り土構造の道路)を建設する計画が持ち上がっている。

取り残される19戸

「第一線堤」に当たる防潮堤だけでは防ぎ切れない東日本大震災クラスの大津波を食い止めることで、それよりも内陸側の市街地への浸水を最小限に防ぐというのが「第二線堤」に位置付けられたかさ上げ道路の役割だ。ところが、その道路よりも海側に19戸の住宅が取り残されることになってしまったのである。

山元町笠野地区で自動車整備工場を営んでいる岩佐好之さん(55歳)の自宅も、かさ上げ道路の予定地よりも海側にある。

「東日本大震災が1000年に1回程度のごくまれな災害だとはいえ、自分の家が海側になることを思うと言いしれぬ不安を感じる」
 岩佐さんが心情を吐露する。
 「震災まもないころから県道をかさ上げして津波を防ぐ施設にする計画があるとは聞いていたけれども、まさか自分の家が海側になるとは思いもしなかった。行政から正式な説明を受けた時には、すでに決まったことなので動かしようがないと言われた」(岩佐さん)。

いちご農家の岩佐隆彦さん(59歳)もかさ上げ道路予定地よりも海側にある津波被害を受けた自宅を修繕して暮らしている。

「そもそも集落よりも内陸にかさ上げ道路を建設する計画があることについて、行政は私たちにいっさい話をしなかった。計画が明らかになってから町長と話をしても県が決めたことだという。県に聞くと町の復興計画で決まったことだと言われた。住民のことを何だと思っているのか」(岩佐隆彦さん)。

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