男子マラソン、五輪選考には「改革」が必要だ リオ代表に22歳の服部勇馬を選ぶべき理由

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世界の猛者どもは、オリンピックや世界選手権などの夏マラソンでも驚異的なスピードで42.195㎞を駆け抜けている。2008年北京五輪は2時間6分32秒、2009年ベルリン世界選手権は2時間6分54秒が優勝タイムだ。現在の日本勢は、気象条件が絶好の冬マラソンでも2時間6分台は厳しい状況。どのようにして世界と戦うつもりなのだろうか。

リオ五輪代表として日本人上位3人を選ぶなら、先に挙げた佐々木、北島、石川のトリオで異論はないだろう。だが、代表メンバーの編成方針は「メダルを含めた複数入賞」を目指すこと。日本陸連の酒井勝充・強化副委員長は、「3枠は保証するものではない」と話しているが、実際に日本陸連が定めたその目標を満たしているのかキッチリ査定すべきだ。

「東京五輪強化枠」の導入を検討すべし

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もし、代表の編成方針を満たしていないなら、いっそ3枠ではなく、「2枠」もしくは「1枠」に減らすことを真剣に考えた方がいいと筆者は思う。選手たちのレース運びを見る限り、オリンピックに出場することが目標で、世界と戦うという意識が欠如していると感じるからだ。そのかわりに、今の選考基準にはない「将来性」という点を考慮し、次の2020年東京五輪で「メダル・入賞を目指して戦える選手かどうか」という基準で、「東京五輪強化枠」を導入してはどうか。

東京マラソンで教え子を日本人上位に送り込んだ青山学院大・原晋監督も「枠を減らすくらいなら、2020年東京五輪で活躍が期待できる若手に出場チャンスを与えるべきでしょう」と主張している。リオ五輪代表候補の3人(佐々木30歳、北島31歳、石川36歳)は全員30代。4年後に大きく成長するとは考えにくい。入賞を狙うのが難しい選手にリオ五輪を走らせるより、若い選手に経験を積ませて、4年後の「メダル」につなげていく戦略の方が建設的だと筆者は思う。

仮に「東京五輪強化枠」が導入されたとしたら、誰を選ぶべきか。個人的には、東京マラソンで日本人2・3位に食い込んだ青山学院大勢ではなく、別の若武者2名をプッシュしたい。ひとりは東京マラソンで30㎞からの5㎞で14分54秒という高速ラップを刻んだ22歳の服部勇馬(東洋大)。もうひとりは、びわ湖で30㎞過ぎに日本人トップを独走して、2時間9分39秒をマークした25歳の丸山文裕(旭化成)だ。ふたりは各選考会で日本人3位以内に食い込むことはできなかったものの、期待感あふれるレースを見せている。服部と丸山はともに今回が初マラソン。経験のなさからスパートのタイミング、ギアの入れ方を誤っただけで、2時間8分台の走力は十分にある。また、世界で戦うんだという強い気持ちも、選考会の走りに表れていた。

特に服部は30㎞(1時間28分52秒)の学生記録保持者(日本歴代3位)で、箱根駅伝2区でも2年連続で区間賞を奪った逸材。大学3年時から東京五輪を見据えて、マラソン練習に取り組むなど、マラソンへの本気度は他の学生ランナーとは違う。「東京五輪強化枠」として最もふさわしい選手だと思っている。

残念ながら、リオ五輪の日本代表選手(候補)では、本番でのメダルは非現実的で、入賞を目指して戦えるかも微妙な状況だ。男女の日本代表は3月17日に発表予定で、まだ議論する時間は残っている。2020年東京五輪で日本中を沸かすためにも、男子マラソン“復活”のシナリオをしっかりと考えていただきたい。

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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