コロムビアミュージックエンタテインメント取締役名誉相談役・廣瀬禎彦(Part1)--月200冊以上、あらゆる雑誌を読みました


 IBMのエンジニアは固定給で営業は歩合給なのですが、幸い売れましたのでエンジニアの時よりも3割方給料は上がりました。営業になる前は、「エンジニアの俺が売ってやったのになんで営業の給料が上がるんだ」という不満もありましたが、お客様に頭を下げるのはたいへんなことだなと思うようになりましたね。

--エンジニアから営業を経て広報へ異動されました。あまり例がない人事ではないのでしょうか。

営業は6年くらいやりました。銀行関係の大きな仕事が終わると、アメリカ本社に呼ばれ、突然広告宣伝の仕事をやらされたんです。帰国後に広報へ異動になったので、今思うとその準備だったのかもしれません。1980年代にIBM産業スパイ事件が起こり、日本ではIBMに対して逆風が吹いていました。広告宣伝機能を強化するため、誰かに広告宣伝の仕事をきちんと本社で研修させようという思いがあったのでしょう。たまたま年齢的にもちょうどいい私が本社にいるということで、選ばれたのだと思います。

--それまでとまったく違う仕事ですよね。

ここまで転落したかと思いましたよ(笑)。エンジニアの実業主体の発想からすると、広報という虚業の仕事をなんでやるんだという印象でした。広報はウソをついてはいけないけど、必ずしもすべて本当のことは言いませんからね。ところが、2年ちょっとやってみて、虚業が大事だということを学びました。人間社会には虚と実の2つの世界があって、両方でマキシマムにするのだということ、持ってるものを人に伝えて初めて価値があるということを知りました。

--広告の仕事に就いた際、月に200冊以上の雑誌を読んでいたそうですね。

某広告代理店のトップが、とにかく雑誌を読みなさいとアドバイスしてくれたんです。代理店の雑誌局からサンプルを毎週送ってくださって、女性誌を含めあらゆる雑誌を読みました。新聞はスナップショット的で一日ごとに論調が変わりますが、雑誌の記事はもっと内容が深い。斜め読みしていくと、世の中の“今の状態”が明確にわかるようになりました。当時でしたら、日米の半導体摩擦などもいろいろな見方があって面白かったですね。

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