不倫を経験した20代後半女性のリアリズム 東京の「婚活事情」最前線<10>
理恵子と聡は、確かに似た者同士でお似合いだ。何もかも完璧な彼らを羨む者も多いだろう。外見がスマートで洗練されているだけでなくお互いが自立していて、良い夫婦というより良いパートナーに見える。
「世間に結婚したいのにできない女の人はたくさんいるけど、感情的にならないで相手を冷静に観察して、一歩一歩見極めながら恋愛を進めて行けば、結婚はわりと簡単にできるんだと思いますよ。ただタイミングを見て、相手の需要を満たしてあげるだけなんだから」
理恵子は無表情に、吐き捨てるように言った。
東京砂漠で、男女が平和に生き残る術
頭でも述べたが、不倫に陥る男女は後を絶たない。
これはきっと東京だけに限らず、基本的に秘密というのは人を魅了するものなのだろう。そして、秘密の関係だからこそ燃え上がり、そこに生まれる共犯意識という絆もある。
元々プライドが高く感情を表に出さない性格なうえ、妻になりさらに落ち着いた理恵子は不倫相手の愚痴や批判を溢すことはしなかったが、結婚について淡々と語る彼女の口調には強い怒りや恨みのようなものがうっすらと滲んでいた。
決して不倫を肯定するわけではないが、東京の恋愛市場の最前線では財力や美しさなどのスペックだけでなく、経験値が何よりの武器になることも多い。
都会のこの種の男女たちは、20代30代で酸いも甘いも経験し、それによって自分に合った異性の条件を絞っていくようになる。結婚を決めるときは、相手にどんなメリットとリスクがあるのか、本能的に計算している。感情に流されず、いかに冷静な判断を下せるかでその結婚の質が決まってくるからだ。綺麗事は必要ない。
悲しいかな、しかしスムーズに「結婚」という契約を結びたいのならば、それが誰も傷つくことない平和な術なのだ。
逆を言えば、男女関係に対して賢くなれず結婚に理想やロマンを求め続ける感情的な者たちは、この市場で取り残されてしまう。東京砂漠とはよく言ったもので、この都会の最前線では皆、洗練された笑顔の仮面を被りながら裏ではごくドライに周囲の人間を観察しプロファイリングしている。食うか食われるか、皆必死だ。典型的なエリート東京人である理恵子にとって、「不倫」という秘密の関係は唯一彼女が素直に熱く感情的になれた場所だったのかもしれない。
東京婚活事情。その成功例が、必ずしも幸せと比例するわけではないということがお分かり頂けたであろうか?年収1,000万までは幸福度は正比例するが、それを超えるとそうでなくなるという文献を目にしたことがある。
東京の最前線の男女たちを観察していると、全くその通りだと思わずにはいられない。ある一定のラインを超えると、自分の価値感という物差しはきっと消滅してしまうのだろう。
我こそはと思う方は、一歩足を踏み入れてみればいい。下手な小説よりもうんと面白い噂話はあちこちにゴロゴロと転がっているはずだ。
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