本当に「業績のいい会社」は株主を見ていない

人を幸せにしない業績主義は王道に反する

坂本 光司(さかもと こうじ)/ 1947年生まれ。法政大学経営学部卒業。浜松大学教授、福井県立大学教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2008年から法政大学大学院教授。専門は中小企業経営論、地域経済論、福祉産業論。同大静岡サテライトキャンパス長、人を大切にする経営学会会長を兼務。国や自治体の委員も多数務める

──決してきれい事ではないと。

社員の満足度が高くモチベーションが高い会社に低業績会社はありません。大手人材派遣会社との共同研究で社員満足度を測る指標を8項目作って100社を対象に調査したら、満足度の高い会社は業績が安定的に高く、満足度の低い会社はずっと低迷したまま、下手すると赤字という具合に、きれいに相関関係が成立しました。だから経営者の仕事は、社員が気持ちよく価値ある仕事ができるよう、よい環境を準備すること。売上高を作ることじゃない。

──企業は当然成長を目指すものという発想が、間違っている?

数字を追うだけなら単なる膨張です。売上高とか生産高とかシェアだとかが最たる膨張指数。それを追うと誰かを不幸にするんですよ。会社の目的は人を幸せにすることで、イコール潰しちゃいかんってこと。ただ、マスコミがよく100年企業と持ち上げたりして、私笑っちゃうんだけど、途中で人を切って継続しているなら、人の犠牲の上に成立しているだけですよね。リストラなんかしたことない、雇用の維持拡大に努めてきたっていうんなら別だけど。

経営者は決断軸を二つ持て

──本の中でよく出てくる「正しい経営」とは?

滅びない経営です。好業績は会社を継続させる手段にすぎない。そもそも経営に倍々ゲームなんて不自然。せいぜい人件費プラスアルファで伸びれば十分です。

そして、世のため人のためになること。私は経営者に、決断軸を二つ持てと言っている。一つは正しいか正しくないか。何に対して正しいかといえば、社員、外注先、顧客、地域住民にとって正しいかどうか。もう一つは自然か不自然か。この2軸を持つと迷わないし、ブレない。たとえば、障害者を雇用するのと雇用せずに罰金払うのとは、どちらも法的には正しい。でも、もし自分の子供が障害者だったらと考えたとき、どちらが正しく自然かといえば、雇用するほうを選ぶはずです。

人本主義で業績も維持する会社をこうして紹介しているのは、現状に対し警鐘を乱打するためです。私の経営学は徳の経営学。優しさ、利他の心に根差す経営は必ず実を結ぶ。

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