本当に「業績のいい会社」は株主を見ていない 人を幸せにしない業績主義は王道に反する

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──サムスン電子が経営に生かしたいと話を聞きに来たそうな。

モデルにしてきた日本の電機メーカーが次々とダメになってることから危機感が生まれ、社内に複数プロジェクトが立ち上がったんだそう。その中の一つのチームがわざわざ来日して、3時間カメラを回していきました。問題は病ですか?と聞くので、違うと答えた。いちばん大切にすべきこと、人間の命と生活を踏みにじる、虫けらのように見る会社がダメになるのは当然だと。何の罪もない一般社員を退職金積み上げて平気でリストラするなんて、とんでもない話です。私の話がどう生かされたかはわからないけど、会社を変えようとした部隊がいたってことは事実ですよね。

トヨタ自動車の豊田章男社長は、シリーズ1作目で取り上げた寒天製造の伊那食品工業の塚越寛会長を師と仰いでいます。取引先も含め社員を幸せにする「いい会社」を社是とし、リストラなしでコツコツ業績を積み上げる優良企業に変えた人物です。

世直しだと思ってハッキリ言います

日本でいちばん大切にしたい会社5(あさ出版/1400円+税/225ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

──大企業にも通じますか?

大企業が変わればこの国変わるじゃないですか。先日も1部上場企業役員が集う勉強会で、あなた方が会社に残り、何の責任もない社員がリストラされるのはおかしい、あなた方が消費者だったらそんな会社の商品買いたいと思うかって、みな嫌な顔して聞いてるのを百も承知で力説しました。それが私の仕事だから。労働組合の集まりでも、あんた方間違ってるって直言しますから。経営者と、次は誰の首に縄掛けるか相談する組合なんて組合じゃないと。世直しだと思ってハッキリ言います。

最初は続編など考えなかったけれど、大反響でシリーズになりました。本を書き、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞という表彰制度を作って世の中を変える。2年前に作った「人を大切にする経営学会」で、間違いだらけの経営学を破壊する。そして最後の仕事が残っている。いちばん重い荷物です。破壊するだけじゃダメ、新しい教育観をビルドしないといけない。詳細は言えないけど、富士山に穴開けるくらいの大工事になります。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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