海外投資家は株式の売り買いの判断をする際に、市場の大きな流れを決定づける可能性がある「投資アイデア」を重要視しています。実のところ、欧米の海外投資家は想定される投資アイデアに基づき戦略を構築すると同時に、その戦略を発動するタイミングをあらかじめ決めている場合が多いのです。要するに、彼らの投資パターンは非常に単純なものが多いというわけです。
ですから、欧米の投資家にとって2015年初めにおける前向きな投資アイデアには、主に「ECBの量的緩和」や「日銀の追加緩和」の二つがあり、それらのアイデアがひとつずつ現実化するたびに、先進国の株式市場を買い進む動機づけになるだろうと考えられていました。とりわけ先進国のなかで2015年の日本株の上昇率が際立っていたのは、それらの投資アイデアに加え、「GPIFによる買い需要」や「成長戦略でのROE重視」、「円安による企業収益拡大への期待」など、積極的に買い進むいくつものアイデアが重なっていたためといえるでしょう。
強気な投資心理がしぼんでいった
実際に、ECBが2015年3月に量的緩和を開始した直後から、欧米の投資家は先進国における株式の買い越し額を膨らませ、そのなかでも市場規模から見て日本株の買い越し額が突出して膨らんでいました。海外投資家は2015年3月~5月の3カ月間に日本株を3兆5213億円買い越しましたが、その動きのなかで特に目立っていたのは、欧州経由のオイルマネーが日本株保有を大幅に増やしていたということです。官制の買い需要に隠れていたものの、オイルマネーが2015年の夏までの日本株上昇の原動力になったのは間違いないのです。
ところが、2015年8月下旬に起こったチャイナ・ショックにより、欧米の長期投資家の強気な投資心理が急速にしぼんでいくようになります。先進国の株価は8月~9月に大幅に下落した後、10月に台頭したECBの追加緩和観測(追加緩和は12月に決定)が新しい投資アイデアとなり、再び先進国の株価はある程度のところまで戻したにもかかわらず、欧米の長期投資家(オイルマネーを含む)は先進国の株式を一貫して売り続けていたのです。
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