「イスラム国」が次に狙うのは為替操作益だ 空爆で収入が激減

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先月にイスラム国が設定した為替レートは、小額のディナール紙幣に対してドル高となっており、同組織が最大20%の利益を得ていると、トレーダーたちは指摘する。

「ダーイシュ(「イスラム国」のアラビア語名)は(商品を)ドルで業者と取引するが、給料はディナールの小額紙幣で払っている」と、モスルのディーリングルームで働く社員は話す。

イラク政府が設定した公式レートは、100ドル=11万8000ディナール近辺となっている。

為替取引を行う会社の経営者によれば、モスルでは流通する最高額紙幣の2万5000ディナール紙幣で取引される場合は、100ドル=12万7500ディナールとなる。最小額紙幣の250ディナール紙幣では同15万5000ディナールと、さらにドル高となる。イスラム国は、運びやすさから高額の紙幣を好むという。

石油収入は3割減少

他の為替トレーダー3人もこのような実態を確認した。彼らは皆、イスラム国から処罰されるのを恐れて、匿名でロイターに語った。同組織の支配地域における安全上の制約から、ロイターは独自にこうした証言を確認することはできなかった。

為替市場を操作することでイスラム国がどのくらい稼いでいるのかを判断するのは不可能だ。また、このような慣習が、イラクとシリアの支配地域で最大の都市であるモスル以外にも広がっているのかは分からない。

トレーダーたちによれば、イスラム国が規則を破った者の金は没収すると脅しているため、他にもっと有利なレートで取引が行われることは非常に限られているという。もし行われるとしても、それが明るみに出ることは決してない。

「誰もそんなリスクは冒したくないだろう」と、トレーダーの一人は話す。

国際社会から制裁を受け、従来の金融機関から締め出されているイスラム国は、現金経済を運営し、セメントや小麦粉や織物を生産する工場を含む生産手段の大半を支配している。

同組織のことを「世界で最も裕福なテログループ」だと、米当局者たちは表現する。2014年に支配地域の銀行から5億ドル近くを略奪し、石油の密輸のほか、税金や身代金として何百万ドルももうけている。

イスラム国の石油施設への空爆により、同組織の石油収入は昨年10月から約30%減少していると、有志連合が1月に発表した。米国防総省当局者は、それまで同組織の石油収入は月間約4700万ドル(約52億6800万円)と試算していた。

2003年の米主導によるイラクへの侵攻以来、安全保障上の最大の危機をもたらしているイスラム国から、イラク当局は今年モスルを奪還したいと考えている。モスル奪還はイスラム国打倒を目指す米戦略の一部でもある。

有志連合のウォーレン報道官は先週、記者団に対し、イスラム国の金融インフラへの空爆について「内臓を打ち抜くようなボディブロー」だとし、「今日はノックアウトしなくても、次第に膝を弱らせ、望むようには機能できなくなる」と語った。

目撃者によれば、今月の空爆でモスルにある中央銀行の建物が破壊されたという。

イスラム国を支持するニュース配信網が掲載した写真には倒壊した同建物が写っている。イラクの金融システムを規制していたかつてのおもかげは跡形もない。

(Stephen Kalin記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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