生命保険への「入り過ぎ」は、防ぐことができる ライフサイクル表をつくれば計算できる

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保険営業員は自分の業績を上げるために、「十分な保障があってこそ安心です」と高めの保障を促すことが多いでしょう。一方、一般消費者の方も「保険は愛の証し」とか「保険に愛を込める」と思い込んでいる人が多いので、家族にはできるだけ多くのお金を残してやりたい、と考えてしまいます。

何とか保険料が払えるのであれば、多少の無理をしても、ついつい大きな保障額で加入してしまうのです。

損保は「引き算」、生保は「足し算」の予想損害額

ここで、火災保険で企業などが保障額を決める際の考え方を見てみましょう。

ある工場が全焼してしまう場合の損害額を1億円としましょう。この金額は工場が跡形もなく燃えてなくなり、工場をゼロから立て直す場合の金額です。ただ、「全焼」してしまうケースは、現実にはそう多くありません。ほとんどが消火活動により消し止められますから、「半焼」や「部分焼失」が大半です。

火災が発生した際の早期発見体制、消防署への通報体制。消防車が到着するまでの所要時間。消防車が燃えている現場にどれだけ近づけるのか。工場敷地内の道路の幅、消火栓の位置、消火ホースの長さ、放水の届く距離。このようなさまざまな要素を加味して、予想される現実的な損害額を1億円から減らしていきます。つまり、損害保険では「引き算」で保障額を絞り込んでいきます。個人が火災保険に入る場合は、通常そこまで厳密に計算しませんが、考え方の基本は同じです。

ところが生命保険の保障額は「足し算」です。

ライフサイクル表を眺めながら、必要だと思われる保障額を積み上げていく方法が生命保険の場合はよく使われています。一見、合理的でわかりやすいのですが、ライフステージごとに必要な保障を、あれもこれもと足していきますので保障額が大きくなる傾向があります。

たとえば死亡保険の場合、「子供が成人するまでの生活費」、「子供の教育費」、「子供の結婚資金」、「残された妻の生活費」などを足していくと、どんどん保障額が膨らんでいきます。夫の死後に残された妻が働けば、その収入分は必要保障額を減らすことができます。ところが、往々にしてどの項目も「残すべき必要額」よりも「残したい金額」で計算されます。残される家族への愛情の大きさは青天井ですから、保障額はどうしても大きくなってしまいます。

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